イライト(読み)いらいと(その他表記)illite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イライト」の意味・わかりやすい解説

イライト
いらいと
illite

粘土鉱物一種白雲母(うんも)と化学組成上よく似ているが、層間のアルカリイオンが不足している。このため、その不足をヒドロニウムイオンで補っていると考えられている。イライトという名称は微細な白色雲母総称として使われ、化学組成上いろいろなものを含んでいるので、現在は系列名として取り扱われている。主として頁岩(けつがん)、酸性火山岩火砕岩(火山砕屑(さいせつ)岩)起源の変質岩中、泥質堆積(たいせき)岩中に広く分布する。ほかの粘土鉱物ほど粘着力はなく、少しぬらした試料をこすると指がすべすべしてくる。アメリカのイリノイ地方の頁岩中から分離されたので、この名がついた。

松原 聰]


イライト(データノート)
いらいとでーたのーと

イライト
 英名    illite
 化学式   K0.65Al2□Al0.65Si3.35O10(OH)2
 少量成分  Fe3+,Fe2+,Mg
 結晶系   単斜
 硬度    1~2
 比重    2.6~2.9
 色     白
 光沢    土状
 条痕    白
 劈開    一方向に完全
       (「劈開」の項目参照

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改訂新版 世界大百科事典 「イライト」の意味・わかりやすい解説

イライト
illite

粘土を構成する微細な鉱物(粘土鉱物)の中で雲母型の鉱物の一般名。1937年グリムR.E.Grimらにより,イリノイ州の粘土質堆積岩中の雲母に対して提唱された名称。結晶構造,化学組成は白雲母に類似するが,それに比べ水分,マグネシウムに富み,アルミニウム,カリウムが少ない。結晶構造は層状構造をしており,通常は粉末試料のX線回折分析により,その回折線の特徴から判定する。電子顕微鏡で観察すると,数μ以下の極微細な薄板状粒子で,さまざまな外形(不定形,短冊状,六角形)のものがある。土壌の構成鉱物としてしばしば見られ,現世の湖,湾,海洋に堆積した泥や粘土質堆積岩中に広く存在する。
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岩石学辞典 「イライト」の解説

イライト

三層構造の雲母に似た鉱物で,白雲母とモンモリロナイトの中間に位置するもの.c 軸の格子間距離は10Åである特徴があり,格子が膨張する性質はない.この鉱物グループについて多数の研究が行われた米国イリノイ州に因んで命名された[Grim, et al. : 1937, Grim : 1968].一般的な化学組成は(K, Na, H3O)1-2Al4(Si7-6Al1-2)O20(OH)4である.

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イライト」の意味・わかりやすい解説

イライト
illite

アルミニウムに富む泥質ないし凝灰岩質堆積岩中に産する,微細な雲母族鉱物の一般名。化学組成上,白雲母に近いものもあるが,比較的二酸化ケイ素,酸化マグネシウム,水に富み,酸化カリウムに乏しい。ハイドロマスコバイトなどと同系列の鉱物。いくつかのポリタイプが報告されている。化学組成も明瞭でなく,結晶構造上,単独鉱物でなく混合層鉱物であるという見解もあって,鉱物学的にはいまだに問題が多い。熱水鉱床母岩の変質鉱物としても普遍的に産出する。

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