粘土を構成する主成分鉱物をいう。大部分は層状珪酸塩鉱物(けいさんえんこうぶつ)で、ほかに非晶質ないし低結晶度鉱物もある。土壌を構成する粘土鉱物を土壌粘土鉱物というが、これは岩石の風化で生成されたものである。土壌の中にも粘土鉱物が多くみられる。粘土鉱物には、雲母(うんも)や緑泥石などのように大きな結晶になる鉱物も含まれているが、こういう肉眼的大きさの結晶に対しては粘土鉱物といわない。逆に、粘土を構成していても石英のようなものは粘土鉱物といわない。すなわち、粘土鉱物というのは特定の鉱物のみを示すものではない。粘土の定義は、窯業、土壌、地質、鉱物など各分野で研究する人々により多少の違いがある。鉱物学者須藤俊男(としお)(1911―2000)によると、粘土とは、(1)可塑性があり、(2)微細な粒からできており、(3)赤熱すると固結する、という三つの性質のうち、少なくとも二つをもつものとされている。しかし、多くの研究から、(2)の条件が粘土のもっとも基本的な性質であるとも述べている。微細な粒というのも厳密な定義があるわけではないが、粒径が2マイクロメートル以下のものが粘土とされることが多い。
[松原 聰]
粘土鉱物は、土壌や風化を受けた岩石中に産し、日本のように火山帯が発達した所では熱水や温泉による岩石の変質部やその中の岩脈、鉱脈中に産する。また火山灰などの堆積(たいせき)物中や堆積岩を構成する鉱物としても産する。
[松原 聰]
熱水溶液中から直接沈殿してできる場合と、母岩との反応によってできる場合がある。とくに後者の場合、母岩の化学成分や生成時の温度、溶媒の水素イオン濃度(pH)によって種類や生成量が影響される。母岩全体が粘土化することもあるが、その中の特定な鉱物のみが粘土化する場合も多い。
[松原 聰]
層状珪酸塩鉱物では、パイロフィライト(葉ろう石)、滑石、モンモリロン石、ノントロン石、サポー石、バーミキュライト(苦土蛭(ひる)石)、雲母属鉱物、緑泥石属鉱物、カオリン鉱物、蛇紋石鉱物があり、非晶質ないし低結晶度鉱物では、芋子(いもご)石、アロフェン、ヒシンゲライトがある。
[松原 聰]
粘土鉱物は広範な利用価値がある。とくに窯業関係では太古から利用されてきているが、ほかに農薬、医薬、塗料、繊維、紙やゴムのコーティング、土木工学関係、肥料などの方面で重要視されている。逆に粘土の有害な面では、地すべりなどの災害を引き起こす元凶としてよく知られている。
英名のクレイという語はねばねばした物質という意味のギリシア語に由来する。
[松原 聰]
『須藤俊男著『粘土鉱物学』(1974・岩波書店)』
岩石,鉱物の分解により生成した微細粒子の集合体である粘土を構成する主要な鉱物類。土壌の主要な構成物でもある。いずれも微粒子として産出し,層状構造をもつ含水アルミノケイ酸塩鉱物であり,ケイ酸塩としてはフィロケイ酸塩に属する。ただし,層状構造と複鎖状構造の共存するものも少数ある。層状構造を示すものとしてはSiO4の四面体より構成される層とAlまたはMg(一部をFeで置換する場合もある)とOおよびOHにより構成する八面体層とがそれぞれ1層ごとに重なって結晶構造の単位となる〈二層構造〉の場合と,上下にSiO4四面体層が存在しその間に八面体層が挟まれて構成される〈三層構造〉となる場合とがある。前者の例としてはカオリナイト,後者の例としてはパイロフィライト(葉蠟石)が挙げられる。また三層構造の場合,一つの三層構造と第2の構造との間にK⁺,H2O2分子,また八面体層が存在することもあり,それぞれ絹雲母(セリサイト),モンモリロナイトおよび緑泥石の構造となる。また2種類の粘土鉱物の構造が順次積み重なる場合,またそれらの粘土鉱物の一部がそれぞれ積み重なる場合もあり,それらを混合層粘土鉱物と呼ぶ。モンモリロナイトと絹雲母の混合層粘土鉱物はよく見られる例である。また層状構造の一部に複鎖状構造が共存する場合の例として海泡石(セピオライト)がある。
粘土鉱物の形態は特別の場合を除き光学顕微鏡下では観察できないほど微粒であり,多くは電子顕微鏡(透過型)下で観察し,膜状,板状,六角板状の形態を明らかにする。
粘土鉱物のおもな成因としては,次のようなものが挙げられる。(1)風化作用 岩石・鉱物類が地表において,雨水およびそれに溶解するO2,CO2,SO2などにより溶脱分解作用と加水作用を受ける場合。(2)熱水作用 岩石・鉱物類が地下において,比較的低圧下で熱水の作用により分解,加水を受ける場合。この場合は風化作用の場合に比較して,やや高温・高圧下の作用であるため,その状態に適応した粘土鉱物の生成が行われる。(3)温泉,噴気による作用 温泉地域や火山地域において,温泉水,火山ガスの作用により岩石・鉱物類の分解が行われ生成する場合。(4)断層などの発生による作用 断層面において岩石の破砕に伴い微粉化,分解作用などが行われ,断層粘土が生成する場合。
粘土鉱物は親水性をもち,湿気を帯びると粘性を示し,また可塑性を示す。乾燥すると剛性を回復し,さらに加熱すると吸着水を放出し,もっと高温に加熱した場合は結晶水を放出し無水の鉱物(たとえばムライトAl4OSi2Al2O12など)とガラス質物質との混合体となる。カオリン類を主とする粘土を用いての陶磁器類の製造はこの一連の性質を利用したものである。また一部の粘土鉱物は陽イオン交換性,乾燥体のガス吸着性を示す場合があり,このため粘土鉱物のあるものにはきわめて広範囲の利用面が知られている。
執筆者:湊 秀雄
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…土壌の分類では粒子の径が2μm(0.002mm)以下のものを,堆積物・堆積岩の分類では1/256mm以下のものをいうなど,その大きさの範囲は分野により異なる。おもに粘土鉱物より成り,一般に親水性が強く,水を含むと可塑性,粘着性を示し,乾燥すれば剛性を示す。岩石の風化作用,温泉作用あるいは熱水変成作用などによって生じ,地上,海底に広く分布している。…
※「粘土鉱物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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