改訂新版 世界大百科事典 「フィリップサイト」の意味・わかりやすい解説
フィリップサイト
phillipsite
鉱物の一種。化学組成はKCa[Al3Si5O16]・6H2O。灰十字沸石ともいう。玄武岩の空洞や塩水湖の堆積物中にも産するが,堆積速度の遅い,また炭酸塩補償深度以深の遠洋堆積物,とくに褐色粘土中に自生鉱物としてMn微小団塊とともに多産する。深海フィリップサイトは長さ8μm~5mm(大部分は10~20μm)の伸びた柱状結晶(単斜晶系)であるが,複雑な双晶体や多数の柱状結晶の球状集合体としても多産する。色は一般に無色~黄褐色,屈折率は1.477~1.486,モース硬度は4~4.5,比重は2~2.5。微量元素としてTi,Ra,P,U,Th,Rb,Sr,Ceなどを含む。フィリップサイトは,一般に火山ガラスとその変質物と共産するので,海底火山噴出物に由来するとされてきた。ペッツィングJ.PetzingとチェスターR.Chesterは1979年に太平洋におけるフィリップサイトの地理的分布と現在の地球上の火山活動の分布を比較して,フィリップサイトは陸上噴火で海洋に落下したガラス破片に由来すると考えている。フィリップサイトは海底で生じたばかりでなく,堆積物中に埋没した後も引き続き成長している例も知られている。
執筆者:内尾 高保
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報