西太平洋の遠洋航海者(読み)にしたいへいようのえんようこうかいしゃ(英語表記)Argonauts of the Western Pacific

日本大百科全書(ニッポニカ) 「西太平洋の遠洋航海者」の意味・わかりやすい解説

西太平洋の遠洋航海者
にしたいへいようのえんようこうかいしゃ
Argonauts of the Western Pacific

「社会人類学の父」とよばれるB・マリノフスキー主著の一つ。「メラネシアのニューギニア群島における、原住民の事業と冒険の報告」という副題をもつ。トロブリアンド諸島の現地調査に基づいて、人々が近隣諸島民との間で行う儀礼交換を叙述する。クラとよばれるこの制度は、ニューギニア島の東に位置し、文化も言語も互いに異なるいくつかの小島を円環状に結ぶ交換システムで、このために島民は死を賭(と)した大航海を遂行するのである。マルセル・モースが『贈与論』(1925)中で引用して以来、人類学以外の分野でも広く知られるようになった。1922年の初版以来、現地調査という新しい方法論を開いた書として、また経済的必要性から物の交換がなされるとする経済学の常識に対する挑戦として多くの読者を得、版を重ねている。

[山本真鳥]

『寺田和夫・増田義郎訳『西太平洋の遠洋航海者』(『世界の名著59 マリノフスキー、レヴィ=ストロース』所収・1967・中央公論社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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