朝日日本歴史人物事典 「観水堂丈阿」の解説
観水堂丈阿
江戸時代中ごろ,宝暦・明和期(1751~72)の草双紙作者。明和末年(1772年ごろ)に87歳と署名した作品があるので,そのころの没かという。別号,木庵。丈阿以前の草双紙は画師の名を記すだけであったが,宝暦ごろ,丈阿や和祥などという作者が,「丈阿戯作」などの署名をするようになって以降,草双紙に作者名が入るようになったと,式亭三馬の『稗史億説年代記』にいう。「武江市隠」という署名もあり,また三馬は「地本屋の筆者丈阿」と記すが,その実歴は分からない。小説年表類には80種を超す作品がみられるが,そのなかにはすでに後年の黄表紙風に,当世風俗を描くものも認められている。
(中野三敏)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報