日本大百科全書(ニッポニカ) 「試斬り」の意味・わかりやすい解説
試斬り
ためしぎり
様物(ためしもの)、試剣術ともいう。刀や槍(やり)の利鈍をみるため、実際に人(死体)または物を斬(き)って、その斬れ味を試す技法。胴・腕・足・胸・首など、斬る部位によって、斬り方もいろいろくふうされたが、土壇(どだん)の上に罪人などの死体をのせて斬れを試す握物斬(すえものぎり)が行われるようになったのは、天正(てんしょう)(1573~92)ころからという。
江戸時代に入って、将軍家の御腰料の斬れ味を試す制度として、山田浅右衛門(あさえもん)家が有名であるが、流派としては、鵜飼流、中川流、山野流などの諸流があり、試斬りの証明として、刀の中心(なかご)に試銘の象眼(ぞうがん)が行われたりした。
なお、今日の試斬りは、居合(いあい)道の修練として、気・剣・体の一致を図るため行われ、試し台の上に巻藁(まきわら)または青竹を置いて、これを斬撃する。
[渡邉一郎]