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象眼 ぞうがんdamascening; inlaying

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

象眼
ぞうがん
damascening; inlaying

象嵌とも書く。 (1) 美術工芸の装飾技法の一種。金属,陶磁,木材などの表面を彫って他の材料を埋込む技法。金属工芸では,金属面の一部を削り取って,そこに別の金属を埋込む。主として色彩的な模様をつけるため,2種類以上の金属などを組合せる。以下の技法がある。 (a) 小平 (こひら) 象眼 模様にするところを鏨 (たがね) で彫り削り,その凹地に別の金属 (文金〈もんがね〉) をはめこむ。 (b) 高肉 (たかにく) 象眼 厚手の文金を金属面より高くはめこむ。 (c) 線象眼 毛彫の線の中に針金を篦 (へら) で押込む。 (d) 布目 (ぬのめ) 象眼 金属面に織物の布目のように細かく浅く縦横,斜めに交わった線を彫り,その中に金銀などの薄い板や針金を埋込む。布目状に彫って表面を打つと薄い板が定着するが,特に鉄が適している。 (2) 印刷用語。版を訂正するため,鉛版や銅版などの修正部分を削って活字などをはめこむこと。

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デジタル大辞泉の解説

ぞう‐がん〔ザウ‐〕【象眼/象×嵌】

[名](スル)
工芸品の装飾技法の一。金属・陶磁・木材などの表面に模様を彫り、そのくぼみに金・銀・貝など他の材料をはめ込むもの。
印刷で、鉛版などの修正箇所を切り取り、別の活字などをはめ込んで訂正すること。「新版で一行そっくり―する」
布や紙に金泥(きんでい)や銀泥で描いた絵。泥絵(でいえ)。また、模様を色糸や金泥などで細く縁どりしたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

象眼
ぞうがん

工芸品の加飾法の一種。象嵌とも書く。金属、陶磁、木材などの表面を削り取り、ここに他の素材をはめ込む技法。金属では中国の春秋戦国時代の青銅器に金・銀を象眼したものがすでにあり、わが国では古墳時代の刀剣金具などにみられる。技法から糸象眼、平(ひら)象眼、高肉(たかにく)象眼、布目(ぬのめ)象眼、切嵌(きりはめ)象眼、銷込(とかしこみ)象眼などに分けられる。
 糸象眼は線象眼ともいい、鏨(たがね)で文様や文字を線彫りし、そのあとに糸状の細い金属をはめ込む技法。象眼のなかではもっとも簡単な技法で、石上(いそのかみ)神社(奈良県)の七支刀、稲荷山(いなりやま)古墳(埼玉県)出土の鉄剣の文字などがこの技法による。平象眼は線ではなく平板をはめ込むが、地金と文様部が平らになるところに特色がある。わが国では中尊寺(岩手県)舎利壇の「蓮唐草団(はすからくさだんかもん)銀象眼」が最古の作例で、平安末期ごろ(12世紀初頭)からみられる。高肉象眼は高肉彫り(立体的に肉高に彫る技法)したものをはめ込んだり、高肉彫りした一部に他の金属をはめ込む複雑な技法で、近世に発展し、装剣小道具に多用されている。布目象眼は鏨で地金に縦横細かく布目状の刻みを入れ、ここに金・銀の針金や薄板をのせ、鎚(つち)でたたき込んで貼(は)り付ける技法で、南蛮渡来といわれ、近世以降の肥後象眼などにみられる。切嵌象眼は地金を透かし、その部分に他の金属をはめて表裏同じ文様にする技法であるが、作例は少ない。銷込象眼は地金の表面を薄く毛彫りしたり、傷つけて金箔(きんぱく)などを擦り込む法である。一般にわが国の象眼遺品は上代と近世に多いが、その流れは糸象眼に始まって平象眼となり、近世に入って布目、高肉へと移行した。
 陶磁では、器胎に文様を削り、そこに素地(きじ)と異なった色の土を嵌入(かんにゅう)し、釉(うわぐすり)をかけて焼成したものをいうが、朝鮮の高麗(こうらい)時代(10~14世紀)に焼かれた象眼青磁はその代表例で、李朝(りちょう)の三島(みしま)とよばれるものにもこの手法がみられる。木材では、板に色や種類の異なる木をはめ込んで文様を表す木画(もくが)がある。奈良時代(8世紀)に多くみられ、正倉院宝物の木画紫檀碁局(したんのききょく)では象牙(ぞうげ)・角(つの)・木などの細片をモザイク風に象眼している。また板に貝をはめ込む螺鈿(らでん)なども象眼の一種といえる。染織でも切嵌象眼の手法を用いたものがあり、正倉院の花氈(かせん)はその好例である。
 西洋でも象眼の歴史は古く、古代エジプトでは木の素地に象牙をはめる手法がすでに発達しており、ツタンカーメン王墓の出土品にこの手法による椅子(いす)や箱などがみられる。ほかに精緻(せいち)な銀象眼で知られるミケーネの青銅の剣や短刀、ギリシアの青銅鏡などがある。[原田一敏]

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