論理法則(読み)ろんりほうそく

改訂新版 世界大百科事典 「論理法則」の意味・わかりやすい解説

論理法則 (ろんりほうそく)

人間の思考が従うべきもっとも一般的かつ基本的な法則,というのが論理法則の伝統的な理解である。そして論理法則を代表する論理学根本原理として,同一律矛盾律排中律の三原則が挙げられるのが通例であった。同一律は〈AAである〉と,矛盾律は〈Aかつ非Aでない〉と,排中律は〈Aまたは非A〉と表現される法則である。現代論理学の立場からわれわれはこれらの根本原則を記号化することができる。仮にA命題(記述文)と理解してよいなら,それぞれ,〈AA〉〈~(A∧~A)〉〈A∨~A〉(⇒:ならば,~:ない,∧:かつ,∨:または,の意)。だが今日では,これらのいわゆる根本原理は,記号⇒,~,∧,∨の用法ゆえに真となる命題(トートロジー恒真命題)の型を表す論理式(恒真式)にすぎず,それらをとくに他の恒真式から区別する理由はない,と考えられている。むしろかつて論理法則のもとに理解されていたものは,現代論理学における恒真式にほかならぬ,といってさしつかえない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の論理法則の言及

【法則】より

… 科学においては,こうした強い理論的裏付けをもったものを〈法則〉,それの弱いものを〈規則〉と呼んで区別することがある。論理法則や数学の法則のもつ絶対的確からしさについては,カントの総合的‐分析的,先天的(ア・プリオリ)‐経験的(ア・ポステリオリ)という著名な区別を立てた議論以来,現実の反映説,思惟法則説など数多くの解釈が生まれたが,今日では厳密な一種の規約主義による解釈が一般的である。つまり,論理法則の場合,われわれは,論理語をいくつかの論理法則が成り立つように使用する,という規約のなかにいるのであって,逆にいえば,論理法則とは,論理語(〈……でない〉〈または〉〈かつ……〉など)の使用規則であることになる。…

※「論理法則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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