改訂新版 世界大百科事典 「論理法則」の意味・わかりやすい解説
論理法則 (ろんりほうそく)
人間の思考が従うべきもっとも一般的かつ基本的な法則,というのが論理法則の伝統的な理解である。そして論理法則を代表する論理学の根本原理として,同一律,矛盾律,排中律の三原則が挙げられるのが通例であった。同一律は〈AはAである〉と,矛盾律は〈Aかつ非Aでない〉と,排中律は〈Aまたは非A〉と表現される法則である。現代論理学の立場からわれわれはこれらの根本原則を記号化することができる。仮にAを命題(記述文)と理解してよいなら,それぞれ,〈A⇒A〉〈~(A∧~A)〉〈A∨~A〉(⇒:ならば,~:ない,∧:かつ,∨:または,の意)。だが今日では,これらのいわゆる根本原理は,記号⇒,~,∧,∨の用法ゆえに真となる命題(トートロジー,恒真命題)の型を表す論理式(恒真式)にすぎず,それらをとくに他の恒真式から区別する理由はない,と考えられている。むしろかつて論理法則のもとに理解されていたものは,現代論理学における恒真式にほかならぬ,といってさしつかえない。
執筆者:坂井 秀寿
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報