日本大百科全書(ニッポニカ) 「谷地舞楽」の意味・わかりやすい解説
谷地舞楽
やちぶがく
山形県の谷地八幡宮(はちまんぐう)(西村山郡河北(かほく)町谷地)に伝わる舞楽。9月の例祭に行われる。谷地八幡の神職である林家(はやしけ)に伝わる舞楽なので、林家舞楽ともいわれる。林家の先祖は大阪四天王寺の楽人であったと伝えられるが、林家に残る古記録の年記から林家が羽州(山形県)に移ったのは鎌倉時代ではなかろうかといわれている。現在の谷地舞楽は参道沿いの石舞台で、『燕歩(えんぶ)』『三台(さんだい)』『散手(さんじゅ)』『太平楽(たいへいらく)』『喜禄(きろく)』『二ノ舞』『還城楽(げんじょうらく)』『抜頭(ばとう)』『陵王(りょうおう)』『納蘇利(なそり)』の10番が舞われる。楽器は竜笛(りゅうてき)、太鼓、鉦鼓(しょうこ)。これらの演目は林家を中心にして、ほかに『太平楽』を舞う4人と『還城楽』『抜頭』を舞う稚児(ちご)が加わって演じられる。なお林家舞楽は同県寒河江(さがえ)市慈恩(じおん)寺の舞楽(5月8日)も勤め、国の重要無形民俗文化財に指定されている。
[高山 茂]