雅楽の舞楽・管絃の曲名。唐楽の壱越(いちこつ)調。一人舞で走舞(はしりまい)(童舞(どうぶ)としても舞う)。舞譜では単に《陵王》,管絃の譜には《蘭陵王》とある。別名を没日還午楽(もつじつかんごらく)という。番舞(つがいまい)は《納曾利(なそり)》。《陵王》用の別装束(赤色裲襠装束)に,金色のあごのゆれる竜頭の面をつけ,右手に金色の桴(ばち)を持ち,左手は剣印(けんいん)という形をして舞う。両手を高くあげ,活発に舞う姿は勇壮で,左方(さほう)の走舞の代表とされ,右方(うほう)の《納曾利》とともによく舞われる。中国の北斉(ほくせい)(550ころ)の蘭陵王長恭は顔かたちが美しかったので,戦場に向かうときは味方の士気をあげるために,いつも勇壮な面をつけて兵を指揮,勝利を収めたという故事による。736年(天平8)に婆羅門(ばらもん)僧正や仏哲(ぶつてつ)などが伝えたという説や,尾張浜主(おわりのはまぬし)が平安初期に唐から伝えたという説がある。もとは沙陀(さだ)調であった。演奏次第は,〈小乱声(こらんじよう)〉/〈陵王乱序〉(太鼓と笛の追吹(おいぶき),舞人登場)-〈囀(さえずり)〉(無伴奏の舞に始まり,次第に太鼓と笛が加わる)-〈沙陀調音取(さだちようのねとり)〉(三管同時に演奏する合音取(あわせねとり))-当曲(早八拍子,拍子16,当曲舞)-乱序(太鼓は〈陵王乱序〉,笛は〈安摩(あま)乱声〉の追吹,舞人は入手(いるて)を舞って退場)。管絃曲としては,早八拍子,拍子16の当曲を管絃吹(かんげんぶき)で演奏する。
執筆者:加納 マリ
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雅楽の曲名。『蘭(らん)陵王』『羅(ら)陵王』ともいう。唐楽左舞(さまい)の一つで林邑八楽(りんゆうはちがく)に属す。もと沙陀(さだ)調で現在壱越(いちこつ)調。舞人一人の走舞(はしりまい)。鎌倉時代の雅楽書『教訓抄』には、中国北斉(ほくせい)の美顔の兵士長恭が大勝利を収めたのを祝したとも、脂那(しな)の王子が父王の陵前で隣国との苦戦を嘆くと、沈みかけた夕日が昇り大勝利を得たのを表すともいうとある。ここから「没日還午楽(ぼつにちかんごらく)」の名もある。「小乱声(こらんじょう)」「陵王乱序」「囀(さえずり)」「沙陀調音取(さだちょうのねとり)」「当曲」「入手(いるて)」の六曲からなる。「陵王乱序」では独特の打楽器のリズムと竜笛の追吹(おいぶき)によって舞人が登場し、「囀」では無伴奏でパントマイムのような振(ふり)をする。別様装束で毛べりの裲襠(りょうとう)に金色の面をつけ右手に桴(ばち)を持つ。勇壮闊達(かったつ)な一人舞の傑作。番舞(つがいまい)は『納曽利(なそり)』。
[橋本曜子]
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…1人で舞うこともあるが,その時は一般に《落蹲(らくそん)》と呼ぶ。番舞(つがいまい)は《陵王》。この曲用の別装束,毛べりの裲襠装束(緑系)に身をつつみ,銀色の目と牙をもつ青色の面をつけて,銀色の桴(ばち)を右手に舞う。…
※「陵王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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