神社に奉仕することを職とする者。祭祀,祈禱をつかさどり,社殿や境内の守護も行う者を総称して神職,神官などと呼んだ。したがって具体的な名称は,時代や地域によって異なり,きわめてさまざまである。律令時代には一般行政をつかさどる太政官とともに神祇官が置かれ,国家の祭祀を行った。神祇官には,伯(長官),大・少副(次官)をはじめ,大・少祐,大・少史および神部(かんべ),卜部(うらべ)がおり,そのほかにも御巫(みかんなぎ)などがいた。伊勢神宮では,古来,祭主(さいしゆ),大宮司,少宮司,禰宜(ねぎ)などの職称があった。諸社では,神主(かんぬし),祝部(はふりべ),宮司,禰宜などの語が一般に用いられた。令制時代,諸社の祝部は国司が神戸(かんべ)の中から選定して太政官に上申し,太政官によって任命されるしくみになっていた。祝部は,放り(葬り)の義から出たとされ,祝,大祝(おおはふり)といったところもある。ちなみに,宮司は神社の維持管理を主としてつかさどる行政官的命名であり,禰宜は神の加護を祈りねぎらう意から出たとされる。また,国造(くにのみやつこ)もその国の司祭者としての面が継承され,出雲大社などでは最高位の神職の称としている。このほか,地方によっては,内人(うちんど),大夫(だいふ),横屋(よこや),法者(ほさ),神殿(こうどの),宮守などの称もある。
明治維新に際し中古以来有名無実となっていた神祇官が再興され,神職制度も改められて順次補正され,1887年3月の改正をもって,神社の祭儀に従事し,事務をつかさどり,または事務に従事する神社の職員を国の職制上の総称として〈神職〉とした。官国幣社では宮司,権宮司,禰宜,主典(または宮掌(くじよう)),神宮神部署では署長,神部,神部補,主事,主事補,伶人,諸社では社司(祠官),社掌(祠掌)の職制がしかれた。当時はいずれも準官吏で身分上勅任,奏任,判任の官をもって待遇された。これが何度か改正され終戦まで続いた。戦後の1946年2月にそれまでの神社に関する法律・勅令等のいっさいが廃止された。そして宗教法人令による神社本庁が設立され,神宮以下全国神社の大部分が宗教法人としてこれに包括されることになった。これにともない〈全国神社の主管者の身分は一斉に宮司とし,その下のものは禰宜とする〉と改められた。
→御師(おし) →神人(じにん) →巫女(みこ)
執筆者:茂木 貞純
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神社に仕えて神事を執り行う職にある者の総称。神饌(しんせん)を献じ、幣帛(へいはく)を供し、祭祀(さいし)や祈祷(きとう)を行い、社務を扱い、宿直(しゅくちょく)し、社殿の内外の清浄を保ち、その修理にあたるなど、多くの職務をもつ。したがって職名も多く、そのなかには同名であるが異職のもの、異名であるが同職のもの、あるいは時代や地域、神社によっても異なるなど一様ではない。総称として、神主(かんぬし)、神官、社家(しゃけ)、社人(しゃにん)、社司(しゃし)、祠官(しかん)、祀職(ししき)、禰宜(ねぎ)、横屋(よこや)、祝(はふり)、太夫(たゆう)、法者(ほさ/ほうじゃ)、法印(ほういん)、宮守(みやもり)、神殿(こうどの)、代殿(だいどん)などがあり、歴史上でおもなものに国造(こくぞう)、祭主(さいしゅ)、大宮司(だいぐうじ)、少宮司、宮司、権(ごん)宮司、神主、禰宜、祝、主典(しゅてん)、刀禰(とね)、棚守(たなもり)、神長官(かみおさのつかさ)、預(あずかり)、師職、行事、神人(じにん)などがある。
国造は大化改新の際に廃止されたが、律令制(りつりょうせい)下の郡司に任ぜられて、もっぱらその国の祭祀をゆだねられた。祭主は神宮神職の長で惣官(そうかん)ともよばれた。祈年祭、月次祭(つきなみのまつり)(6月、12月)、神嘗祭(かんなめさい)を務め、朝廷と神宮との間の公文書にはかならず署名をなした。宮司は主として神社の造営や収税のことをつかさどったが、のちには広く祭祀や祈祷にも仕えた。神宮では祭主に次いで大宮司、少宮司を置く。一般の神社で宮司は神職の長で、大社には宮司に次いで権宮司が置かれている。神主は、もと神事に仕えるおもなる者の称であったが、のちに神職の総称となる。禰宜は祝の上に位置し、ともにもっぱら祭祀や祈祷を行ったが、のちに両者とも神職の総称となる。主典は神宮で大宮司・少宮司の下に置かれた職。また旧官国幣社に置かれ祭儀や庶務に従事した。刀禰は神宮や賀茂別雷(かもわけいかずち)神社などで用いられた下級神職の称。棚守は棚守職ともよび、京都の八坂(やさか)神社、伊豆(いず)の三嶋(みしま)大社、安芸(あき)(広島県)の厳島(いつくしま)神社などにいた神職。神長官は神長とも称し、諏訪(すわ)大社にいた神職で、大祝(おおはふり)の下で社務を処理した。預は神社の管理や運営を依託された神職で、正預、権預の階級があり、石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)や春日(かすが)大社などにいた。師職は崇敬者の依頼により神札の配布や祈祷を行ったりした者で、御師(おし)、御祈祷師(ごきとうし)などとよばれ、神宮や石清水八幡宮、春日大社にいた。行事は神社の雑事をつかさどった神職で、総大行事、大行事、権行事、小行事、修理行事などがあり、日前(ひのくま)・国懸(くにかかす)神宮や鹿島(かしま)神宮などにいた。神人は神事の雑役を務めた下級神職で、神主や宮司の支配を受けた。また、僧侶(そうりょ)で神社に仕えた社僧(しゃそう)(神僧(しんそう)、供僧(ぐそう)、宮僧(くそう/くぞう))も注目される。現在の神職は宮司、権宮司、禰宜、権禰宜などに分かれている。
[三橋 健]
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… 近代日本においては,全国の神社は伊勢神宮と宮中三殿を頂点として整然とした位階制に編成されており,神社においては国家の定めた祭祀が行われ,祭祀の様式も国家によって統一的に定められていた。神職は国家の官吏ないしその待遇をうける存在であり,すべての国民は特定の神社の氏子であった。それぞれの神社の信仰や祭儀の内容には伝統に由来する特質がなお保持されてはいたが,国家による統制と画一化はいちじるしく強められ,地域の小祠も一村一社の村氏神をつくりあげる方向で統合されて,統合されることのない民俗信仰的な諸次元のものは,淫祠や迷信として弾圧された。…
…特定の神社に世襲的に奉仕する神職家。古代では,氏上(うじのかみ)が氏族をひきいて氏神につかえ,あるいは一定の地域の長(おさ)がその地縁の人々をひきいて土地の神の祭祀を行ったが,神仕えには厳重な潔斎を必要とするため,いつしか専従の神職が生まれ職業的に世襲されるようになった。…
…1665年(寛文5)7月11日,江戸幕府が発した神社・神職統制のための法度。同日付で寺院・僧侶統制の寺院法度が出されており,両者合わせて幕府の宗教統制策の根幹をなした。…
…出雲国造家,熱田大宮司家などは,古い国造(くにのみやつこ)の系統が神社と結びついて後世まで残った例である。神職の名は神社によってさまざまであるが,祭主(さいしゆ),宮司(ぐうじ),神主(かんぬし),禰宜(ねぎ),祝(はふり),預(あずかり),神人(じにん)などはその例であり,八幡宮や祇園社などには,社僧(しやそう),供僧,神僧,宮僧などと呼ばれる僧形の神職があった。他方,小さな神社では,氏子の座や講などの組織から,一年神主,当屋神主などが選ばれて,祭りを行うのが一般であった。…
…神職の名称の一つで,神職の総称としても用いる。もっぱら,祭祀に従事する。…
※「神職」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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