貴族の巣(読み)きぞくのす(その他表記)Dvoryanskoe gnezdo

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貴族の巣」の意味・わかりやすい解説

貴族の巣
きぞくのす
Dvoryanskoe gnezdo

ロシアの作家 I.ツルゲーネフ長編小説。 1859年発表。妻の不義を知り絶望して単身帰国した主人公ラブレツキーは,近在の清純無垢な娘リーザと愛し合うようになるが,死んだと伝えられていた妻が突然帰国し,すべてが破綻する。主人公は『ルージン』の系譜をひく貴族階級の進歩的知識人の「余計者」であるが,ルージンとは対照的なタイプで,彼のように自尊心は強くなく,無口で,大地を耕すことに喜びを見出している。だが自己の階級の危機を鋭く感じ取っていながら,それを回避するすべも知らないまま,既成の伝統のなかにとどまっている。作者は貴族階級の運命や,そのモラル哲学を,郷愁をもって抒情的に優美に描きあげている。

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世界大百科事典(旧版)内の貴族の巣の言及

【オガリョフ】より

…連作《モノローグ》(1847)等で憂愁を含んだロマン主義的作品を数多く書き,40年代を代表する詩人の一人に数えられている。ツルゲーネフは《貴族の巣》の主人公ラブレツキーにオガリョフの経歴と風貌とを与えた。【長縄 光男】。…

※「貴族の巣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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