内科学 第10版 「透析脳症」の解説
透析脳症(腎疾患に伴う神経系障害)
3年以上の透析歴をもつ慢性透析患者にみられる亜急性,進行性の症候で,吃り(95%),構音障害,運動性失語などの言語障害,顔面や全身のミオクローヌス(81%),焦点性発作,全身痙攣,人格変化,姿勢保持困難(asterixis),記銘力低下などの精神症状をきたし,ついには無言の認知症に進行し,発症後6~9カ月で死亡する.透析認知症(dialysis dementia)ともよばれる.病初期には透析と関連して症状がみられるが,進行すると持続性となる.透析脳症剖検例で大脳アルミニウム含量が多いことから,アルミニウム中毒であることが明らかとなり,現在では透析液中のアルミニウムが除かれた結果,発症は激減した.尿毒症性脳症と異なり意識は末期まで比較的保たれる.脳波では高振幅徐波の群発や棘波がみられる.ほかの脳症,脳血管性認知症やAlzheimer病などの認知症疾患と鑑別する.アルミニウムに親和性が高く,その排泄を促進するキレート剤のデフェロキサミンが有効である.[高 昌星]
■文献
Ropper AH, Samuels MA: Adams and Victor's Principles of Neurology, 9th ed, McGraw-Hill, 2009.
Rowland LP, Pedley TA: Merritt's Neurology, 12th ed, Lippincott Williams & Wilkins, London, 2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報