アルミニウム(読み)あるみにうむ(英語表記)aluminium 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルミニウム」の意味・わかりやすい解説

アルミニウム
あるみにうむ
aluminium 英語
aluminium フランス語
aluminum 米語

周期表第13族に属する金属元素。普通にみられる金属のうちでは、もっとも新しいものの一つ。

歴史

その名称は、天然産のアルミニウムを含む硫酸塩ミョウバン)を意味するラテン語alumenに由来する。ミョウバンはすでに5世紀ごろから収斂剤(しゅうれんざい)や媒染剤などに用いられていた。粘土からミョウバンをつくる方法が17世紀に記録されており、18世紀には粘土の中に石灰と異なる塩基が含まれていることが認められていた。しかし、1809年、水素気流中で融解アルミナAl2O3の電気分解によってアルミニウム‐鉄合金が得られること、この合金を溶かした溶液からアルミナが回収されることがイギリスのH・デービーによって明らかにされるまで、その存在を証明することはできなかった。この元素に対しデービーは前述のalumenにちなんでalumiumの元素名を提案したが、のちにaluminiumとなった。単体としてアルミニウムを得るのに初めて成功したのはドイツのF・ウェーラーで、1827年塩化アルミニウムカリウムと反応させて得た。フランスのサント・クレール・ドビルH. Sainte-Claire Deville(1818―1881)は還元法とともに電解法をも開発し、粘土を原料として電解法でかなりの量の金属アルミニウムを得て、1855年のパリの万国博覧会に「粘土からの銀」として出品した。これをみたナポレオン3世が、フランス甲騎兵の装具をこの軽金属でつくろうとして、彼を援助したことは有名である。現在、大規模な製造に利用されているアルミナと氷晶石を用いる融解塩電解法は、1886年にフランスのP・L・T・エルーとアメリカのC・M・ホールがそれぞれ独立して発明した。

[守永健一・中原勝儼]

存在

地殻中の存在度は酸素、ケイ素に次いで第3位、金属元素としては第1位で、多量に、また広く存在する。種々のアルミノケイ酸塩として、岩石、土壌の主要成分となっている。おもな鉱物には、長石、雲母(うんも)、氷晶石、ギブス石、ダイアスポア、ミョウバン石、カオリナイトなどがあり、それらが風化した粘土のほか、酸化物にはコランダムサファイアルビー)など宝石として珍重されるものが多い。

[守永健一・中原勝儼]

製法

ケイ素との分離がむずかしいので、アルミノケイ酸塩を原料とすることはできない。含水酸化アルミニウムAl2O3xH2Oの組成をもつボーキサイトが原料として用いられる。不純物として含まれる鉄とケイ素を除くため、ボーキサイトの精製が必要となる。原料を加圧下で濃い水酸化ナトリウムの熱溶液で処理すると、酸化アルミニウムはアルミン酸ナトリウムとなって溶ける。不溶性の水酸化鉄を濾別(ろべつ)した濾液に結晶性の水酸化アルミニウムを少量加えて、空気を通しながら攪拌(かくはん)を続けると、水酸化アルミニウムが濾過しやすい粒状となって沈殿する。このときケイ酸塩は溶液中に残る。生じた水酸化アルミニウムを高温で焼いて酸化物とする。次に氷晶石を溶融し、これに酸化アルミニウムを溶かし、約1000℃、5ボルトで黒鉛を電極として電解する。電極反応は複雑であるが、見かけ上は、氷晶石に溶けた酸化物が電解されてアルミニウムと酸素になり、酸素がさらに陽極の炭素と反応して二酸化炭素または一酸化炭素を生じたことになる。普通の電解法でつくられるアルミニウムの純度は99.8%であるが、電解精製により99.99%以上の高純度のものが得られる。

[守永健一・中原勝儼]

性質

銀白色の軟らかい軽金属で、展性、延性に富み、薄い箔(はく)とすることができる。空気中に放置すると、酸化物の被膜を生じて光沢を失うが、内部まで冒されることはない。空気中で融点近くに熱すると、白光を放って燃えて酸化アルミニウムとなる。その際、多量の熱を発生する。

  4Al+3O2―→2Al2O3+3338.832KJ
 このようにアルミニウムと酸素とは非常に化合しやすく高温が得られるので、金属の冶金(やきん)や溶接に利用される。たとえば、酸化鉄とアルミニウムの粉末をるつぼに入れ、マグネシウムリボンで点火すると、次の反応によって生じた鉄は酸化アルミニウムに覆われて融解状態となるほどである(テルミット法)。

  2Al+Fe2O3→2Fe+Al2O3+845.168KJ
 この方法はクロムマンガンなどの酸化物から金属を製造するのにも使われ、ゴルトシュミット法と総称されている。熱すると窒素、硫黄(いおう)、炭素などと直接結合して、窒化物、硫化物、炭化物などとなる。ハロゲンとも反応しやすく、塩素、臭素中では激しく燃えて塩化アルミニウム、臭化アルミニウムとなる。塩酸、硫酸に溶けてそれぞれ塩化物、硫酸塩をつくるが、濃硝酸には酸化物の被膜を生じ、かえって冒されにくくなる。これを不動態とよんでいる。電気的にアルミニウムの表面に酸化物をつくり、耐銹(たいしゅう)性にしたものがアルマイトである。アルミニウムは水酸化アルカリ溶液に水素を放って溶けてアルミン酸塩となる。

[守永健一・中原勝儼]

用途

金属は展延性に富み、比重が小さく、熱、電気の良導体で、大気中での耐食性が優れているため、板、箔、棒、線、管、型材などあらゆる形に加工されて利用されている。高反射率をもつため高純度アルミニウムは光学機器などの反射鏡に用いられる。また電解コンデンサー箔、磁気ディスク、レーザー用反射鏡、集積回路用蒸着材などに用いられる。その軽さを利用して航空機、自動車、船舶、鉄道に、電気の良導体であることを利用して送電線などに使われている。Al-Cu系合金はジュラルミンとよばれる。また、食品工業、食器類などでのアルミニウムの利用は、耐食性と人体に害のないことによる。そのほか、ペイント、アルミニウム箔による包装、建築材料や原子炉材など、きわめて広範囲の用途が知られている。このような金属または合金としての用途のほかに、多くの化合物が利用される。化合物は、イオン結合性と共有結合性の境界付近にあるようにふるまう。ミョウバンなど硫酸塩、塩化アルミニウム、アルミナ、水素化物とヒドリド化合物および有機アルミニウム化合物などが、それぞれ各種の目的に利用されている。

[守永健一・中原勝儼]



アルミニウム(データノート)
あるみにうむでーたのーと

アルミニウム
 元素記号  Al
 原子番号  13
 原子量   26.98154
 融点    660.4℃
 沸点    2467℃
 比重    2.6989(測定温度20℃)
 結晶系   立方
 元素存在度 宇宙(Si106個当りの原子数)
          8.51×104(第12位)
       地殻 8.23%(第3位)
       海水(/mgL-1)0.01

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルミニウム」の意味・わかりやすい解説

アルミニウム
aluminium; aluminum

元素記号 Al,原子番号 13,原子量 26.981538。周期表 13族に属する。天然には安定同位体アルミニウム 27のみ存在する。地殻存在量 8.13%で,酸素,ケイ素に次いで多い。鉱石としてはボーキサイト,カオリンが主で,工業的にはボーキサイトと氷晶石の溶融塩電解によって製する。単体は金属で展性,延性に富む。融点 660.2℃,沸点約 2477℃,比重 2.6989 (20℃) 。空気中では表面に酸化物の緻密な薄膜を生じ,内部は保護される。融点近く熱すると激しく燃焼し,高温を生じるので,冶金,溶接に利用される。酸ともアルカリとも反応し,水素を発生する。軽く,加工も容易なため,そのままあるいは合金として日用品,建築材料,運輸関係,送電線などに広く利用される。粉末は塗料,テルミットに利用される。

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