改訂新版 世界大百科事典 「速乾性インキ」の意味・わかりやすい解説
速乾性インキ (そっかんせいインキ)
high speed drying ink
印刷直後,きわめて短い時間で乾燥するインキに対する総称。ただし溶剤蒸発による乾燥を利用したものは含めないのが通例である。1970年代に,アクリル基などの反応を利用した,数秒以内で完全に硬化する紫外線硬化型インキが実用化され,速乾性インキが現実のものになった。しかし,紫外線硬化型インキは,紫外線のもつエネルギーだけでは重合を起こすことができず,多量の反応開始剤や増感剤を併用するため,高価になるばかりでなく,これらの非反応物質がそのまま乾燥したインキ皮膜中に残存する欠点がある。そこで,紫外線よりさらにエネルギーの高い電子線によるラジカル反応を利用するインキの開発が進められ,80年代に入って実用化された。電子線硬化型インキは,反応性モノマーやオリゴマーを用いて,反応開始剤や増感剤などをいっさい使用せずに,数十分の1秒という速乾性を達成している。
→ヒート・セット・インキ
執筆者:高木 登志男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報