ヒートセットインキ(その他表記)heat-set ink

改訂新版 世界大百科事典 「ヒートセットインキ」の意味・わかりやすい解説

ヒート・セット・インキ
heat-set ink

加熱することにより短時間で乾燥(固化)するようにつくられた高速印刷用インキ。オフセットおよび凸版輪転印刷用の油性インキを指す場合が多いが,広義にはグラビア印刷用溶剤インキも含まれる。代表的な油性ヒート・セット・インキは多色オフセット輪転印刷用のインキである。その組成中に20~50%の石油系溶剤を含み,印刷ユニットに続く熱風乾燥装置を通過する間に溶剤が蒸発すると同時に固化,定着し,美しい色彩と光沢をもつ印刷面を形成する。雑誌,書籍,カタログ,ポスター,ちらしなどのカラー印刷に広く用いられている。これに使用される石油溶剤は,精製,分留された200℃前後の沸点をもつものが一般的である。グラビア印刷用のインキには,トルエンその他の芳香族系溶剤やエステル類など,蒸発速度のはやい溶剤を多量に用いて,より高速な印刷を可能にしている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ヒートセットインキ」の意味・わかりやすい解説

ヒート・セット・インキ

変性フェノール樹脂などの合成樹脂を溶剤に溶解し,これに顔料を加えてつくった速乾性印刷インキ。印刷後電熱やガス赤外線等で加熱することによって乾燥させる。凸版の高速度印刷やオフセット多色刷のような大量印刷の場合に用いられる。→オフセット印刷

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒートセットインキ」の意味・わかりやすい解説

ヒートセットインキ
heat-set ink

速乾型インキの一種。オフセット輪転印刷の主流として使われている。印刷速度の高速化をはかるため,合成樹脂を用いて版面から紙上にインキが転移した瞬間に,強制乾燥によってセットさせるもので,特殊な樹脂を溶かしたベヒクル (展色剤) に顔料を練合せて製造する。凸版の高速度印刷や平版オフセット多色刷りのような,多量生産に適する。この実用化は,今日の高速色刷り発達の礎石となった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のヒートセットインキの言及

【ウェット印刷】より

…また,カラー印刷に多用されるオフセット平版印刷では,巻取紙を使って連続的に各色インキを刷り重ねる方法がもっとも生産性が高いから,いきおい未乾燥インキの上に次のインキを重ねることになる。この場合,ヒート・セット・インキという速乾性のインキを用い,半乾燥状態のインキ膜の上に次のインキが乗るように設計し,4色(一般には表と裏4色ずつ計8色)刷り終わったところで乾燥機に入れ,一度に乾燥させてしまう。この機構を円滑に行うには,次々と重ねられるインキのタックネス(粘り)をしだいに小さくしていく。…

※「ヒートセットインキ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android