遷移金属-オレフィン錯体(読み)センイキンゾクオレフィンサクタイ

化学辞典 第2版 の解説

遷移金属-オレフィン錯体
センイキンゾクオレフィンサクタイ
transition metal olefin complex

一般に,エテンアクリロニトリルなどのようなオレフィン類が配位した遷移金属錯体をいい,安定な低原子価状態の遷移金属オレフィン錯体が多数単離されている.合成法の例を示す.

  PdCl2 + 2C6H5CN →

[Fe(C5H5)(C2H4)(CO)2]AlCl3X  

  Ni(CO)4 + 2CH2=CHCN → Ni(CH2=CHCN)2  

[Mn(C5H5)(C2H4)(CO)2]  

安定なオレフィン錯体としては,古くからツァイゼの塩 K[PtCl3(C2H4)]や [PtCl2(C2H4)]2 などが知られており,前者の場合,エテンがその分子面で白金に配位していることがX線回折により確認された.また,遷移金属-オレフィン結合については,オレフィンが二重結合上のπ電子を通じて遷移金属に配位し,遷移金属はそのd電子をオレフィンの反結合性軌道に逆に供与することによって安定な結合をつくると考えられている.一方,白金よりもやや不安定ではあるが,同型のパラジウム錯体 [PdCl2(C2H4)]2 などもヘキスト-ワッカー法のPdCl2の触媒作用からよく知られている.オレフィン類が有機金属錯体触媒の作用で反応する場合,たとえばチーグラー触媒によるオレフィン重合,オキソ合成でのオレフィンのヒドロホルミル化などでは,はじめに金属-オレフィン錯体が生成することによりオレフィンが活性化され,反応すると考えられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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