遺伝性プリオン病

内科学 第10版 「遺伝性プリオン病」の解説

遺伝性プリオン病(プリオン病)

(2)遺伝性プリオン病
概念
 わが国では約20%弱を占め,PrP遺伝子変異の点変異が最も多いが,リピートの変異でも起きる.遺伝子変異と臨床症候はある程度関連しており,Gerstmann-Straussler-Scheinker病(GSS),遺伝性CJD(gCJD),致死性家族性不眠症(FFI)などの臨床病型がある.常染色体優性遺伝性でGSSやFFIの浸透率は高いが,わが国で最も多いコドン180番変異によるgCJDにはふつう家族歴はなく“孤発性”として発症する.
病理
 gCJDは大脳,GSSは小脳,FFIは視床で強い変性を認めるが,海綿状変化が目立たなかったり,PrPScの沈着が非常に少ない病型がある.GSSではPrPScは小脳に斑状に沈着する(クールー斑).
臨床症状
 GSSやFFIの発症年齢は古典型CJDより若いことが多い.コドン180変異によるgCJDは,高齢発症の認知症を呈し進行が緩徐である.GSSではコドン102番の変異が最も多く,小脳失調のみの時期が長く続き,全経過は数年と緩徐であるためまさに遺伝性脊髄小脳変性症の病像を呈することに注意する.致死性家族性不眠症は視床型sCJDと似ており不眠,発熱,頻脈発汗などの自律神経症候が目立つ.
検査成績
 症候,MRI・脳波・髄液所見が典型的でないことがあり,PrP遺伝子検査を行う.
診断
 家族歴のある認知症,小脳失調症では必ずプリオン病も考え鑑別を進め,必要に応じてPrP遺伝子検査を行う.特にコドン180番や232番の変異によるgCJDはふつう家族歴がないため注意が必要である.[水澤英洋]
■文献
黒岩義之,水澤英洋編集:プリオン病感染予防ガイドライン(2008年版).In: プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班,2009,http://prion.umin.jp/ guideline/index.html
水澤英洋編集:プリオン病および遅発性ウイルス感染症.厚生労働省難治性疾患克服研究事業プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班,金原出版,東京,2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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