改訂新版 世界大百科事典 「小脳失調症」の意味・わかりやすい解説
小脳失調症 (しょうのうしっちょうしょう)
cerebellar ataxia
小脳およびそれと密接な連絡をもつ脳幹・脊髄の障害により運動を円滑に遂行できない状態。起立時に体が不安定で動揺するため足を広く開く。歩行も手足の動きがばらばらで協調がとれず,開脚で酔ったときのように千鳥足となる(酩酊歩行)。また物を取ろうとしてもさっと手が届かず,ぎくしゃくと振れたり(運動解体),行きすぎたりする(測定障害)。手の回内・回外などの反復運動は非常にぎごちなく時間がかかる(変換運動障害)。書字に際しては,ペンで紙をつき破ったり,字がしだいに大きくなったりする。会話はぶっきらぼうで唐突となり(爆発性,断綴性言語),音声を出すのに努力を要する。原因は感染症,腫瘍,血管障害,中毒(アルコール,抗痙攣(けいれん)剤などによる)などさまざまであるが,遺伝性あるいは孤発性で進行性の病態もあり,脊髄小脳変性症と呼ばれている。
→運動失調症
執筆者:水沢 英洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報