遺物包含層(読み)いぶつほうがんそう

改訂新版 世界大百科事典 「遺物包含層」の意味・わかりやすい解説

遺物包含層 (いぶつほうがんそう)

遺物を含む土層をさす考古学の用語。略称包含層。欧米でいう文化層cultural layerにほぼ相当する。しかし,一つの遺物包含層が,時代を異にする幾つかの文化層に分かれることも多い。初期の日本考古学では,貝塚以外の先史時代遺跡について認識があさく,遺物は山林原野の地表面に遺存していると考えられていた。1894年,鳥居竜蔵,大野延太郎は,東京国分寺の丘の切通しで,地表下数十cmに土器石器が包含されているのを実見し,遺跡が地上ではなく〈地下幾尺かの土中〉に存在することを初めて認識した。2人は《東京人類学会雑誌》第107号(1895)でこれを〈遺物包含層〉と名づけ,開発・耕作によってこれがこわれ,地上に散乱したものを〈遺物散列地〉(のちに遺物散布地の名で普及)とよんだ。したがって学史的には,遺物包含層は貝塚の堆積層を含まないことになる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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