改訂新版 世界大百科事典 「還元融資」の意味・わかりやすい解説
還元融資 (かんげんゆうし)
一般に拠出制の年金制度では,制度発足後しばらくの間は,保険料を拠出する者に比して年金を受給する者が少なく,毎年度の収入は支出を上回る。厚生年金保険および国民年金においては,この収支の差額は年金積立金として大蔵省所管の資金運用部に預託され,財政投融資の原資として,他の政府資金とともに一元的に管理運用されている。この積立金は,将来の年金給付の財源の一部となるものであり,加入者等が拠出した保険料の集積であるため,その運用に当たっては特別な配慮が加えられている。還元融資は,毎年度の積立金新規預託額の一定割合を,年金福祉事業団,地方公共団体等を通じて,病院・社会福祉施設等の整備や住宅建設のための資金(いわゆる年金融資)として貸し付ける制度であって,その目的は,保険料拠出者の福祉の増進と生活の向上を図るとともに,積立金に対する理解を深め,あわせて年金制度の円滑な運営に資することにある。
執筆者:田村 正雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報