精選版 日本国語大辞典 「国民年金」の意味・読み・例文・類語
こくみん‐ねんきん【国民年金】
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日本の公的年金制度のなかで、全国民共通の基礎年金とともに、自営業者などに対する独自の年金を支給する制度。国年(こくねん)と略称される。
[山崎泰彦 2023年6月19日]
国民年金は、1959年(昭和34)の国民年金法に基づいて制定され、1961年4月から全面的に施行された。国民年金は、厚生年金保険および共済年金の対象外であった農林漁業などの自営業者や零細事業所の労働者を対象として発足し、これにより国民皆年金体制が実現した。ただし、被用者年金(国民年金の第2号被保険者)の加入者の妻と20歳以上の学生への適用については、例外的に任意加入とされ、将来の課題として残された。以下はその後の改正の主要事項である。
(1)1985年改正 全国民共通の基礎年金の導入による年金制度の一元化、給付水準の適正化と将来の負担増の緩和、被用者年金加入者の配偶者に対する国民年金強制加入による女性の年金権の確立、20歳前に障害者となった者などに対する障害基礎年金の支給などによる障害年金の改善、1人1年金の原則による併給調整。
(2)1989年(平成1)改正 20歳以上の学生への強制適用、任意加入制の国民年金基金の創設。
(3)2000年(平成12)改正 65歳以後の年金額改定の物価スライド方式への一本化、保険料半額免除制度および学生の保険料納付特例制度の導入。
(4)2004年改正 基礎年金の国庫負担割合の引上げ、最終保険料を固定したうえで給付水準を自動調整するマクロ経済スライド方式の導入、保険料の多段階免除制度の導入。
(5)2012年改正 老齢基礎年金等の受給資格期間の25年から10年への短縮、基礎年金国庫負担割合2分の1の恒久化、父子世帯に対する遺族基礎年金の支給。
(6)2016年改正 第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除、年金額改定ルールの見直し。
(7)2020年(令和2)改正 国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え、未婚のひとり親等を寡婦と同様に国民年金保険料の申請全額免除基準等(支払い全額免除の対象)に追加。受給開始時期の選択肢の拡大。
[山崎泰彦 2023年6月19日]
国民年金の被保険者は3区分されている。
(1)第1号被保険者 日本国内に住所のある20歳以上60歳未満の者であって、以下の第2号・第3号被保険者でない者
(2)第2号被保険者 厚生年金保険の被保険者
(3)第3号被保険者 第2号被保険者の被扶養配偶者であって、20歳以上60歳未満の者
なお、国民年金の被保険者資格には国籍要件はない。当初は日本国民を対象者としていたが、難民条約批准に伴う改正により、1982年1月から国籍要件が撤廃され、国内に住所のある外国人も被保険者とされている。
[山崎泰彦 2023年6月19日]
全被保険者共通の老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金のほかに、第1号被保険者のみの独自給付である付加年金、寡婦年金、死亡一時金、脱退一時金がある。
(1)老齢基礎年金 原則として、受給資格期間が10年以上ある者が65歳に達したときに支給される。受給資格期間は、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間を合計した期間である。保険料納付済期間には被用者年金の加入期間を含む。合算対象期間とは、老齢基礎年金の受給資格期間には算入するが年金額の計算の基礎には含めない「カラ期間」で、外国に居住していた期間、被用者年金加入者の配偶者や学生であって加入が任意とされていたときに任意加入しなかった期間などである。支給開始年齢については、60歳以上65歳未満での繰上げ(減額)支給、66歳以上75歳以下での繰下げ(増額)支給を選択することもできる。年金額(年額)は、新規裁定者(67歳以下)の満額が79万5000円(2023年度)で、20歳から60歳になるまでの40年間に保険料の未納期間や免除期間があれば、その期間に応じて減額される。ただし、国民年金が発足した1961年4月に20歳以上であった者には、年齢に応じた期間短縮措置がある。
(2)障害基礎年金 障害の原因となった傷病の初診日において被保険者であった者などで、初診日前に保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が被保険者期間の3分の2以上あり、かつ障害認定日に1級または2級障害の状態のある者に支給される。年金額(年額)は、1級障害99万3750円、2級障害79万5000円である(いずれも2023年度新規裁定、67歳以下)。その他、初診日において20歳未満であった者にも、20歳以後障害の状態にあれば、本人の所得が一定額以下であることを条件として、障害基礎年金が支給される。
(3)遺族基礎年金 国民年金の被保険者で保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせた期間が被保険者期間の3分の2以上ある者、老齢基礎年金の受給権者、老齢基礎年金の受給資格期間を満たした者など、いずれかの要件を満たした者が死亡したとき、その者によって生計を維持していた子のある配偶者または婚姻していない子に支給される。子とは、18歳到達年度の末日までの子または20歳未満であって1級・2級の障害の状態にある子である。年金額(年額)は、配偶者と子1人の場合102万3700円(2023年度新規裁定、67歳以下)で、2人目以降の子についての加算がある。
(4)第1号被保険者の独自給付 付加年金は任意加入制の基礎年金の上乗せ給付で、付加保険料の納付済期間に応じて支給される。寡婦年金は、第1号被保険者としての加入期間のみで老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている夫が年金を受けないで死亡したとき、妻に60歳から65歳になるまでの間支給される。死亡一時金は、第1号被保険者として保険料を3年以上納めた者が、老齢基礎年金、障害基礎年金のいずれをも受けないで死亡し、その遺族が遺族基礎年金を受給できない場合に、遺族に支給される。脱退一時金は、第1号被保険者としての保険料納付済期間が6か月以上ある外国人で年金を受けられない者が、帰国したとき支給される。
[山崎泰彦 2023年6月19日]
毎年の基礎年金の給付費は、全被保険者(第1号被保険者については保険料納付者、第2号被保険者については20歳以上60歳未満)が頭割りで負担する。具体的には、第1号被保険者は個別に保険料を負担し、第2号および第3号被保険者分の保険料は、厚生年金保険から基礎年金拠出金として一括して納付する。国庫負担は基礎年金給付費の2分の1である。
国民年金の第1号被保険者の保険料(月額)は、1万6520円(2023年度)である。この保険料は、基礎年金の給付費分のほかに、第1号被保険者の独自給付および積立に回る分も含む。任意加入の付加年金の保険料は月額400円である。第1号被保険者の保険料については、法定免除、申請免除、産前産後期間免除の制度があり、保険料の納付が免除される。法定免除となるのは、生活保護法の生活扶助を受けるときや、障害基礎年金の受給権者などである。申請免除となるのは、所得がない者や、生活保護法による生活保護以外の扶助を受けるとき、その他保険料の納付が困難であると認められるときなどで、申請により保険料の全額、4分の3、2分の1、4分の1が免除される。産前産後期間(出産予定日の前月から4か月間)については保険料の全額が免除される。その他、学生を対象とする納付特例制度と50歳未満の被保険者を対象とする納付猶予制度があり、学生については、本人の所得が一定額以下の場合、50歳未満の被保険者については本人と配偶者の所得が一定額以下の場合に、申請により保険料の納付が猶予される。保険料免除等を受けた期間は、年金給付の受給資格期間に算入され、老齢基礎年金の年金額の算定にあたっては、法定免除と申請免除の期間については国庫負担相当分の給付、産前産後期間については保険料全額納付者と同額の給付がつく。一方、保険料の学生納付特例と納付猶予を受けた期間については、老齢基礎年金の年金額には反映されず、その分は減額になる。障害基礎年金と遺族基礎年金については、保険料免除等を受けた期間があっても、減額されることなく全額が支給される。これらの保険料免除等を受けた期間分の保険料は、10年以内の期間分に限って追納できる。
なお、保険料の滞納による無年金・低年金を解消する観点から、一定の負担能力があり、保険料免除等の対象にならない者であって、保険料を長期滞納している者については、所得や納付の状況などを踏まえつつ、最終催告状が送付され、それでも自主的に納付しない者については、滞納処分(財産の差押え)が行われる。
[山崎泰彦 2023年6月19日]
『みずほ総合研究所編著『図解 年金のしくみ』第6版(2015・東洋経済新報社)』▽『吉原健二・畑満著『日本公的年金制度史――戦後七〇年・皆年金半世紀』(2016・中央法規出版)』▽『『国民年金法総覧』隔年版(社会保険研究所)』▽『『社会保険のてびき』『年金のてびき』『国民年金ハンドブック』各年版(社会保険研究所)』▽『厚生労働統計協会編・刊『保険と年金の動向』各年版』
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(梶本章 朝日新聞記者 / 2007年)
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…第2は厚生年金グループで,民間の給料生活者が対象である。第3は国民年金で,主として自営業者が対象だが,給料生活者でも5人未満の事業所は原則として国民年金の適用を受け,また任意加入の規定によって給料生活者の妻も数多く加入してきた。8制度といわれたのは,共済組合グループには国家公務員共済組合,地方公務員等共済組合,公共企業体職員等共済組合(以上の3者は公的な職域),私立学校教職員共済組合,農林漁業団体職員共済組合(後2者は民間の特殊な職域)の五つがあり,また厚生年金グループには厚生年金のほかに船員保険(厚生年金とほぼ同じ内容を船員に適用)があるので,これに国民年金を加えて8制度と称したのである。…
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