日本大百科全書(ニッポニカ) 「郡内織物」の意味・わかりやすい解説
郡内織物
ぐんないおりもの
山梨県の郡内(甲斐(かい)国、ほぼ現在の南・北都留(つる)郡にあたる)地方で織り出される織物の総称。この地方は、甲斐絹(かいきぬ)を周辺一帯の農家が自家生産していたのが始まりで、1633年(寛永10)上州総社(そうじゃ)から郡内に入部した秋元氏が殖産興業として奨励したことから盛んになり、西鶴(さいかく)や近松の作品に「郡内縞(じま)」とみられるほど著名になった。明治以後は、甲斐絹を生産第一とし、洋傘地の生産を加え、近代的発展が図られた。現在では、八端(はったん)、服裏地、洋傘地などを織り出している。また単に郡内といえば甲斐絹蒲団(ふとん)をさすことがある。
[角山幸洋]
『谷村工業高校社会部編・刊『郡内機業発達史 上』(1956)』▽『飯田文弥著「郡内の織物」(『日本産業史大系5』所収・1960・東京大学出版会)』