日本大百科全書(ニッポニカ) 「ふとん」の意味・わかりやすい解説
ふとん
ふとん / 蒲団
布団
寝具の一種。近世において、木綿綿(もめんわた)の普及により、夜着とともに用いられるようになった。もともと衾(ふすま)といわれていたものである。
和式寝具の中核をなすもので、敷きぶとんと掛けぶとんの2種がある。敷きぶとんは、三幅の物を三布(みの)ぶとんといい、一般に用いられている。掛けぶとんは第二次世界大戦前は五幅の五布(いつの)ぶとんがおもに用いられていたが、戦後は4.5幅の四布半(よのはん)ぶとんが多く用いられている。関東では敷きぶとんの三布ぶとんは、並幅一反を三つに切り、幅を縫い合わせる引返し仕立てである。関西では表布三布、裏布四布を用い、周囲に(ふき)を出す鏡仕立てとし、三布より広い。関東の掛けぶとんは表布五布、裏布五布で表裏同寸法で縫い合わせ、毛抜き仕立て(突き合わせ仕立て)にする。関西では表布四布、裏布六布で鏡仕立てにする。近年は関東、関西ともに敷きぶとんは引返し仕立て、掛けぶとんは関東でも鏡仕立てを用いる傾向になってきている。ふとん丈は、身長に30センチメートル加えた寸法が必要である。従来は敷きぶとん、掛けぶとんとともに、ふとん丈は190センチメートルを標準としてつくられていたが、体格の向上、高度成長の時期を迎え量産が行われるようになり、1974年(昭和49)、それまでのふとんの丈、幅を基準として許容寸法を考え、日本工業規格(JIS(ジス))による寸法が表示された。1983年(昭和58)に確認され、一般用のふとんの長さの規格が195センチメートル、210センチメートルの2種とされた。この規格は、ふとんに関連のあるふとんカバー、敷布など大量生産が行われる既製品に合理性を与えた。ふとんにはこのほか、こたつ用のこたつぶとん、座るのに用いる座ぶとんなどがある。
ふとんの布地は従来は「青梅(おうめ)の夜具地」といわれる、縞物(しまもの)の綿織物がおもに用いられてきた。現在は綿織物では綿サテン、更紗(さらさ)なども多く用いられ、これは三幅物になっているので、敷ぶとんはそのままの幅で丈の2倍あればふとん1枚ができる。絹織物のふとん地には秩父銘仙(ちちぶめいせん)、郡内(ぐんない)などの紬(つむぎ)類、八端緞子(はったんどんす)、縮緬(ちりめん)、羽二重(はぶたえ)などがある。色ははでな明るいものがよく、柄(がら)は大柄のものが用いられる。掛けぶとんの裏地は絹紬(けんちゅう)、富士絹、フジエット、スフモスなど、色はクリーム系のものが多く、無地のものを用いる。夏掛けはクレープ、サッカー、絽(ろ)など、夏向きのさらっとした布地、色も涼しげに白、ブルー系を用いる。柄も涼味を誘うものがよく、裏地は淡いブルー系の無地を多く用いる。
充填(じゅうてん)材としては木綿綿(ふとん綿)の場合、三布敷きぶとんには5.4キログラム以上、掛けぶとんは四布半に5.6キログラム以上、夏掛けには1.2キログラム以上を入れる。近年の組み夜具は、三布引返し仕立て敷きぶとん2枚と、鏡仕立て四布半掛けぶとん2枚である。これに要するふとん綿の量は約6本(10枚1包みを1本といい3キログラム)である。木綿綿は保温性、吸湿性に富み、適度の弾力性があり、もっとも優れている。合纖綿は吸湿性、耐熱性が劣るとともに、かさばるので荷重により大きく変形する。外見は厚みがあるようでも、物体をのせると非常に薄くなるなどから、敷きぶとん用には向かない。現在、敷きぶとん用に木綿綿と合纖綿とを混ぜることが研究されているが、木綿綿の性能には追い付かない状態である。しかし、かさがあり軽く暖かいという点で、掛けぶとんにもっぱら用いられている。ただ吸湿性が劣るから、老人や病人には直接かけないほうがよい。就寝時には身体と掛けぶとんの間に、丹前(たんぜん)に浴衣(ゆかた)を重ねたものか、または木綿のタオルケットなどを用いると、その欠点を補うことができる。なお水鳥の羽毛を用いた羽ぶとんは、軽くて保温性に富み、老人、病人に向く。
ふとんは、就寝中に身体から発散する水分を吸収しているから、晴れた日に日光に当てて干し乾燥させる。このことは、ふとんの管理、身体の健康管理上たいせつである。太陽光線による熱エネルギーによって綿は膨らむから、保温性を保つうえにも効果が大きい。近年はふとん乾燥機も登場しており、日光に干す時間のない人はこれを利用するとよい。ふとん綿は長い年月使用していると、日光に当てても膨らむ量は減少する。そのときは綿の打ち直しをする。打ち直しをした綿は繊維も短くなり、腰も弱くなるから、新しい綿を補充して用いる。
[藤本やす]
羽毛ふとん
水鳥(カモ、アヒル、ガチョウ、ガン)の羽毛を入れたふとん。水鳥の羽は羽根(フェザー)と綿羽(わたばね)(ダウン)があり、両方を混合して使用している。フェザーには柔らかい羽軸があり両側に羽枝がつく。ダウンは中央の核から放射状に細かい羽枝が広がり、空気を十分に取り込むので、より保温性に富む。ダウンの混合率や水鳥の種類によって品質は決まるが、業界の自主基準ではダウン50%以上を羽毛ふとん、フェザー50%以上を羽根ふとんと表示している。側生地(がわきじ)は、羽毛が出ないよう加工され、片寄りのないよう縫製がくふうされている。
[辻ますみ]