酒飯論(読み)しゅはんろん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「酒飯論」の意味・わかりやすい解説

酒飯論
しゅはんろん

「下戸上戸絵詞(げこじょうこえことば)」「三論絵詞」「酒食論」「上戸下戸之巻」とも称される絵巻。『群書類従』では第19輯(しゅう)飲食部に詞書(ことばがき)のみ所収され、1550年(天文19)ごろの作とされている。詞書は一条兼良(かねら)、絵は土佐光元(みつもと)と伝えられる。造酒正糟屋朝臣長持(みきのかみかすやのあそんながもち)という大の上戸と、飯室律師好飯(いいむろりっしこうはん)という小づけを好む下戸の僧と、中左衛門大夫(たいふ)中原仲成(なかなり)という酒も小づけも好む中戸の3人が、三様に、上戸のよさ、下戸のよさ、どちらもほどほどにたしなむ中戸のよさを主張して歌を詠むという内容である。絵には武家や僧の食事やその台所ありさまが描かれ、中世末期の食生活を知るうえで、また服飾史研究においても貴重な資料とされる。数種の模本伝存する。

[片岸博子]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の酒飯論の言及

【上戸・下戸】より

…上戸,下戸の語はそれらからの変化と思われる。室町期の《酒飯論(しゆはんろん)》には〈中戸(ちゆうこ)〉という語も見える。この絵巻のことばがきは一条兼良の戯作ともされているが,大上戸の造酒正(みきのかみ)糟屋朝臣長持と,最下戸の飯室律師好飯という僧を登場させて,酒と飯との徳を論じ合わせ,最後に中左衛門大夫仲成なる人物をして〈中戸に過ぎたるものぞなき〉と,酒も飯もともにほどほどに楽しむのが最上だといわせている。…

※「酒飯論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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