化学辞典 第2版 「重合熱」の解説
重合熱
ジュウゴウネツ
heat of polymerization
重合反応における反応熱.ビニル化合物では比較的大きな負の値(発熱反応)をもつ.重合体と単量体とのエンタルピー差として与えられるが,主として次の四つ,
(1)単量体と重合体の燃焼熱の差,
(2)重合反応時の発熱量の直接測定,
(3)天井温度付近における重合動力学解析,
(4)天井温度,平衡単量体濃度および重合エントロピーなどの関係,
から求めることができる.重合熱に及ぼす構造上の因子としては,
(1)立体因子,
(2)共役効果,
(3)水素結合および溶媒和因子,
などがある.スチレンより2-フェニルプロペンのほうが,アクリル酸メチルよりメタクリル酸メチルのほうが重合熱が小さいのは(1)の効果で,重合体における立体障害が単量体におけるよりも大きいためである.エテンの重合熱に比べ,スチレンが約42 kJ mol-1,ブタジエンが約13 kJ mol-1 小さい重合熱を示すのは,単量体の共役安定化による(2)の効果として説明できる.アクリル酸やアクリルアミドのベンゼン中での重合熱が,薄いアルコール溶液中での重合熱より13~21 kJ mol-1 小さいのは(3)の効果があることを示している.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報