スチレン(読み)すちれん(英語表記)styrene

翻訳|styrene

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スチレン」の意味・わかりやすい解説

スチレン
すちれん
styrene

不飽和炭化水素の側鎖をもつ芳香族化合物の一つ。スチロールビニルベンゼンともいう。

 無色、特異なにおいをもつ液体。工業的製造法としては、塩化アルミニウム触媒の存在下、ベンゼンエチレンからエチルベンゼンをつくり、ついで酸化鉄(Ⅲ)‐三酸化クロム系の金属酸化物触媒の存在下、高温脱水素する。スチレンは反応性に富み、明るいところに放置すると重合し、空気の存在下では過酸化物を与えるので、カテコールなどの重合禁止剤や酸化防止剤を加えて貯蔵する。有機過酸によりスチレンエポキシドを与え、過マンガン酸カリウムで酸化すると安息香酸を生ずる。スチレンは高分子工業の重要な原料である。スチレンを原料とする樹脂としては、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、スチレン・メチルメタアクリラート樹脂、ハイスチレンがあり、塗料、乾性油、イオン交換樹脂として用いられる。

[向井利夫]


スチレン(データノート)
すちれんでーたのーと

スチレン

 分子式  C8H8
 分子量  104.2
 融点   -30.69℃
 沸点   145.2℃
 比重   0.9019(測定温度25℃)
 屈折率  (n)1.54382
 引火点  31℃(開放式)
 爆発範囲 1.1~6.1%(空気中の容量%)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スチレン」の意味・わかりやすい解説

スチレン
styrene

化学式 C6H5-CH=CH2 。スチロールともいう。特臭ある無色の液体。沸点 145.2℃,引火点 31℃。石油留分の熱分解生成物に少量存在するが,工業的には主としてエチルベンゼンの金属酸化物触媒による脱水素によって大量生産されている。ビニル基をもっているので,熱,過酸化物などの触媒によって容易に重合し,高分子化合物となる。ポリスチレン,スチレンブタジエンゴム,不飽和ポリエステル樹脂などの原料となるばかりでなく,塗料,イオン交換樹脂の製造にも使われる。

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