スチレン(その他表記)styrene

翻訳|styrene

デジタル大辞泉 「スチレン」の意味・読み・例文・類語

スチレン(styrene)

芳香性のある無色の液体。エチルベンゼン脱水素によって作る。熱・触媒の存在で容易に重合してポリスチレンとなる。合成樹脂合成ゴムの製造原料。化学式C6H5-CH=CH2 スチロール
[類語]プラスチック発泡スチロールウレタンポリエチレンセルロイドセロハンビニール

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精選版 日本国語大辞典 「スチレン」の意味・読み・例文・類語

スチレン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] styrene ) 芳香族炭化水素の一つ。分子式 C8H8 刺激臭のある無色の液体。石炭および石油留分の熱分解生成物中に少量存在する。引火性が強い。光・熱・重合開始剤などで重合してポリスチレンとなる。スチレンブタジエンゴム・ポリスチレンの製造原料として重要であるほか、塗料、乾性油ポリエステル樹脂イオン交換樹脂などの製造に用いられる。スチロール。フェニルエチレンビニルベンゼン

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改訂新版 世界大百科事典 「スチレン」の意味・わかりやすい解説

スチレン
styrene


芳香族炭化水素の一つ。スタイレンとも呼ばれ,またスチロールstyrol,ビニルベンゼン,フェニルエチレンなどともいう。天然樹脂である蘇合香(そごうこう)styraxから発見されたのが名称の由来である。特異な芳香のある無色,引火性の液体で,空気中で燃えるとき芳香族化合物特有の黒いすす(煤)を出す。融点-30.69℃,沸点145.2℃,比重d425=0.9019。爆発範囲1.1~6.1%(空気中の容量%)。フェニル基に置換された二重結合は反応性に富み,種々の試剤の付加を受けやすい。室温では光や空気により徐々に重合し,熱や過酸化物により容易に重合する。保存は,不活性気体中,冷暗所で行い,ブチルカテコールなどの重合禁止剤を微量加える。

 石炭乾留や石油の高温熱分解の生成物中に少量存在するが,工業的には,ベンゼンをエチレンでアルキル化してエチルベンゼンをつくり,それを脱水素して製造される。

反応(1)では,塩化アルミニウム,リン酸,あるいはゼオライト(沸石)などの酸触媒が用いられる。反応(2)は,鉄,クロム,亜鉛などの酸化物を触媒として,600℃前後の温度で,やや減圧下で行われるのがふつうであるが,酸素を用いて水の形で水素を除く酸化脱水素法も一部行われている。スチレンは,その重合反応性を利用した高分子合成反応の原料として重要であり,多くの誘導品が生産されている。その主要なものをあげれば,スチレン・ブタジエンゴムSBR,ブタジエンとの共重合体,合成ゴム),ポリスチレン(熱可塑性プラスチック),ABS樹脂(アクリロニトリル,ブタジエンとの共重合体,強く硬い熱可塑性プラスチック)などである。
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化学辞典 第2版 「スチレン」の解説

スチレン
スチレン
styrene

C8H8(104.15).スチロール,フェニルエテンともいう.不飽和炭化水素の側鎖をもつ芳香族の一つ.石炭および石油系炭化水素の熱分解生成物中に少量存在する.工業的製法は,おもにエチルベンゼンを原料とする方法である.現在,操業されている製造法には,高温(590 ℃ 以上),スチーム存在下で鉄-クロム-カリウム系触媒を用いたエチルベンゼンの直接脱水素法と,エチルベンゼンを一度酸化して過酸化物をつくり,炭化水素(プロペンなど)で還元してアルコールとし,さらにこれを脱水する方法とがある.後者の場合には還元の際に有用な酸化物(酸化プロピレンなど)を併産することができる.ほかにエテン製造の際に副生する炭化水素油から分離する方法もある.引火性,特臭を有する無色の液体.融点-30.63 ℃,沸点145.14 ℃.0.90122.1.54395.爆発範囲1.1~6.1体積%.各種有機溶剤に可溶,水に不溶.反応性がきわめて高いため,貯蔵には重合防止剤の添加を必要とする.重要な石油化学工業の中間体で,数多くの誘導製品がある.おもなものは,スチレン-ブタジエンゴム(SBR),ポリスチレン,ABS樹脂などである.[CAS 100-42-5]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スチレン」の意味・わかりやすい解説

スチレン
すちれん
styrene

不飽和炭化水素の側鎖をもつ芳香族化合物の一つ。スチロール、ビニルベンゼンともいう。

 無色、特異なにおいをもつ液体。工業的製造法としては、塩化アルミニウム触媒の存在下、ベンゼンとエチレンからエチルベンゼンをつくり、ついで酸化鉄(Ⅲ)‐三酸化クロム系の金属酸化物触媒の存在下、高温で脱水素する。スチレンは反応性に富み、明るいところに放置すると重合し、空気の存在下では過酸化物を与えるので、カテコールなどの重合禁止剤や酸化防止剤を加えて貯蔵する。有機過酸によりスチレンエポキシドを与え、過マンガン酸カリウムで酸化すると安息香酸を生ずる。スチレンは高分子工業の重要な原料である。スチレンを原料とする樹脂としては、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、スチレン・メチルメタアクリラート樹脂、ハイスチレンがあり、塗料、乾性油、イオン交換樹脂として用いられる。

[向井利夫]


スチレン(データノート)
すちれんでーたのーと

スチレン

 分子式  C8H8
 分子量  104.2
 融点   -30.69℃
 沸点   145.2℃
 比重   0.9019(測定温度25℃)
 屈折率  (n)1.54382
 引火点  31℃(開放式)
 爆発範囲 1.1~6.1%(空気中の容量%)

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百科事典マイペディア 「スチレン」の意味・わかりやすい解説

スチレン

芳香族炭化水素の一つ。分子式C6H5CH=CH2。スチロール,フェニルエチレン,ビニルベンゼンとも。特有香のある無色の液体。融点−30.69℃,沸点145.2℃。多くの有機溶媒に易溶。エチルベンゼンの脱水素によりつくられる。熱,触媒などにより容易に重合する。ポリスチレン合成ゴム(SBR),ABS樹脂の原料などとして重要。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スチレン」の意味・わかりやすい解説

スチレン
styrene

化学式 C6H5-CH=CH2 。スチロールともいう。特臭ある無色の液体。沸点 145.2℃,引火点 31℃。石油留分の熱分解生成物に少量存在するが,工業的には主としてエチルベンゼンの金属酸化物触媒による脱水素によって大量生産されている。ビニル基をもっているので,熱,過酸化物などの触媒によって容易に重合し,高分子化合物となる。ポリスチレン,スチレンブタジエンゴム,不飽和ポリエステル樹脂などの原料となるばかりでなく,塗料,イオン交換樹脂の製造にも使われる。

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世界大百科事典(旧版)内のスチレンの言及

【エチレン】より


[用途]
 1981年における日本のエチレン需要は約370万tであり,そのうちの約46%はポリエチレン製造用(高圧法ポリエチレン用が第1位で約28%を占め,さらに低・中圧法ポリエチレンが約18%)である。これに続いて塩化ビニル,アセトアルデヒド,エチレンオキシド,エチレングリコール,スチレンなどが重要な合成化学的用途である(95年のエチレン生産量は約700万t)。エチレンからの主要な誘導体は図1に示すとおりである。…

※「スチレン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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