アクリル酸(読み)あくりるさん(英語表記)acrylic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクリル酸」の意味・わかりやすい解説

アクリル酸
あくりるさん
acrylic acid

代表的な不飽和カルボン酸。プロペン酸ともいう。

 クロロプロピオン酸の脱塩化水素、ヒドロキシプロピオン酸の脱水により調製できる。工業的には、石油から得られるプロピレン原料として、アクリルアルデヒドを経る2段階の酸化により製造されている。この酸化反応は酸化剤として空気を用い、触媒にモリブデン系化合物を用いる。プロピレンからアクリル酸を1段階でつくる製造法もある。

 酢酸に似たにおいのする液体で、水とは任意の割合で混じり合う。毒性が強く、重合しやすい。単独で重合させるとポリアクリル酸になり、増稠(ぞうちょう)剤、紙加工用粘結剤などに用いられる。架橋を含むポリアクリル酸ナトリウムは吸水性が強いので、紙おむつなどに用いる。

[廣田 穰]


アクリル酸(データノート)
あくりるさんでーたのーと

アクリル酸
  CH2=CHCOOH
 分子式  C3H4O2
 分子量  72.06
 融点   14℃
 沸点   141.6℃
 比重   1.062(測定温度16℃)
 屈折率  (n)1.4210
 溶解度  ∞(水と任意の割合で混合
 解離定数 Κ=5.5×10-5

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アクリル酸」の意味・わかりやすい解説

アクリル酸
アクリルさん
acrylic acid

ビニルギ酸ともいう。化学式 CH2=CHCOOH 。有機合成原料およびポリアクリル酸,ポリアクリル酸エステルなど重要な高分子化合物の出発原料である。工業的には,プロピレンの空気酸化によりアクロレインを経て製造される。またアセチレンと一酸化炭素と水から,テトラカルボニルニッケルを触媒としてつくられる (レッペ法) 。アクロレインの酸化,アクリロニトリルの加水分解によっても得られる。酢酸に似た刺激臭のある無色の液体で,水および多種の有機溶剤に可溶である。融点 13℃,沸点 141℃。アクリル酸のメチルエステルやエチルエステルは重合を経て合成樹脂として利用される。特にエステルの重合体は接着剤その他に利用される。

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