化学反応が起こると,多かれ少なかれ熱の出入りを伴う。これを精密に測定して化学物質とエネルギーの関係を定量的に論じる分野を熱化学と呼ぶ。熱の発生を伴う反応を発熱反応といい,その逆の吸熱反応と区別する。多くの化学反応は発熱を伴うので,発熱量こそ化学反応の推進力と考えられたこともある。この考えは現代では正しくないが,一般に発熱反応は自発的に起こりやすいものが多い(トムセン=ベルトローの原理)。たとえば水素ガス2容と酸素ガス1容の混合気体はわずかの衝撃で瞬間的に反応して水蒸気を生じ,その際,水蒸気1mol(約18g)当り241.8kJもの多量の熱を発生する。このほか,(1)有機化合物の燃焼反応,(2)安定な有機および無機化合物の生成反応,(3)酸と塩基の中和反応,(4)金属と酸の反応,(5)金属酸化物と水の反応,などに数多くの発熱反応の例がみられる。人類の文明は燃焼反応による熱エネルギーの利用とともに進んできたといってよく,木材(炭水化物)から始まって石炭,石油(炭化水素)としだいに被燃焼物の種類が広がってきた。新しいエネルギー源として水素ガスの生成,貯蔵が考えられているのは,上記のように水素の酸化反応に伴う発熱量がきわめて大きいからである。発熱反応は工業的利用に限らず家庭内での暖房その他にも広く用いられている。金属粉末の酸化反応速度を触媒で制御し,局所的熱源として長時間使用する方法はなじみ深い。以上の例では化学結合の組換えによるエネルギーが放出されるが,原子核反応ではさらに多量の熱が放出される。
執筆者:菅 宏
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化学反応において反応物から生成物を得る際、熱が発生する反応をいう。化学反応式において左辺は反応物、右辺は生成物を示すが、この式に熱の出入りを含めたものを熱化学方程式という。発熱反応においては、反応において熱が発生するので、右辺に発熱量Qを正の値として記す。反応における熱の出入りは、反応物質中の原子の結合エネルギーの総和と、生成物質中の結合エネルギーの総和との差による。生成物の中の結合エネルギーが反応物質のそれより小さいとき、Qは正となり発熱反応に、逆のときQが負の値となって吸熱反応となる。水素の燃焼反応は典型的な発熱反応である。
2H2+O2―→2H2O+57.8kcal
すなわち1モル当り57.8キロカロリーの熱を発生する。
[下沢 隆]
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原系から生成系に変化する際,熱の放出を伴う化学反応をいう.ある化学変化が発熱反応であるということは,反応が低い温度で進みやすいという大まかな目安にもなる.核反応では,エネルギーの放出を伴う反応をいい,この際,生成系の質量は原系の質量に比べて減少する.
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…ベルトロとデンマークのトムセンH.P.J.J.Thomsenはそれぞれ独立に,化学反応によって発生する熱量が化学親和力の尺度となるのではないかと考えた。この仮説によれば,発熱反応のみが自発的に起こることになる。しかし一連の反応熱の精密測定によって多くの反応は確かに発熱反応であるが,吸熱反応も少数ではあるが確実に起こることが確かめられ,この仮説は一般的には成り立たないことがしだいに明らかとなった。…
…質量mとエネルギーEの等価性についてのアインシュタインの式E=mc2によれば,Qが正のときには反応の際にエネルギーQが放出されることがわかる。このような反応を発熱反応という。逆にQが負の場合は吸熱反応と呼ばれ,-Q以上のエネルギーを与えなければ反応は起こらない。…
…熱の吸収を伴う化学反応をいい,この逆を発熱反応と呼ぶ。大部分の化学反応は後者であるので,発熱量こそ化学反応の推進力と考えられた時代もある。…
※「発熱反応」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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