日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブタジエン」の意味・わかりやすい解説
ブタジエン
ぶたじえん
butadiene
ジエン(炭素間二重結合を2個もつ化合物の総称)のもっとも簡単なもの。炭素4個からなる直鎖でしかも2個の不飽和結合を含む炭化水素。不飽和結合のある位置により1,2-ブタジエンと1,3-ブタジエンの2種の異性体がある。前者はメチルアレンともよばれ、通常、ブタジエンというと後者をさす。ゴムはイソプレン(2-メチルブタジエン)が重合した構造をもつので、1920年代末にドイツでブタジエンを原料として合成ゴムのブナ(BUNA)が発明された。これを契機としてブタジエンの製造技術の開発が進んだ。さらに太平洋戦争初期に日本が東南アジアを占領してアメリカへの天然ゴムの供給を断ったことが、アメリカにおける合成ゴムの開発を促進したといわれる。現在では、ブタジエンは石油から製造されている。ナフサの分解でエチレンを製造する際に生ずる炭素数4個の留分から得るか、あるいはブタンまたはブテンの脱水素により製造する。可燃性で、常温では無色有毒の麻酔性のある気体であるが、圧力を加えると容易に液化する。
日本では年間約100万トン生産されているが、おもに合成ゴムの原料として利用される。これとスチレンとの共重合体はスチレン・ブタジエンゴム(SBR)で汎用(はんよう)合成ゴムとして、またアクリロニトリルとの共重合体(NBR)は耐油性の合成ゴムとして、アクリロニトリルおよびスチレンの双方との共重合体(ABS)は耐衝撃性の合成樹脂として利用される。また、ブタジエンの重合体のポリブタジエン(PBR)も汎用の合成ゴムとして用いられる。
[徳丸克己]
ブタジエン(データノート)
ぶたじえんでーたのーと
ブタジエン
(C4H6,分子量54.1)
1,2-ブタジエン
構造式 CH3CH=C=CH2
融点 -136.190℃
沸点 10.85℃
比重 0.676(測定温度0℃)
屈折率 (n)1.4205
1,3-ブタジエン
構造式 CH2=CHCH=CH2
融点 -108.915℃
沸点 -4.413℃
比重 0.650(測定温度-6℃)
屈折率 (n)1.422