朝日日本歴史人物事典 「野口男三郎」の解説
野口男三郎
生年:明治13(1880)
明治時代の謀殺強盗犯。そのほか,漢学者野口寧斎と11歳になる少年殺しとしても騒がれた。大阪市生まれ。本名は武林男三郎。明治29(1896)年に学問を志し上京。初め理学博士石川千代松のもとに寄食したが,のち漢学者野口寧斎の書生となる。野口の妹ソエと恋愛関係に陥り婿養子となった。女児をもうけたが,東京外国語学校ロシア語卒(実は中退)などのウソがばれるなどで離縁される。金銭に困窮して,同38年5月,薬店経営の都築富五郎を殺し350円を奪った。逮捕後,警察は3年前に起こった11歳の少年河合荘亮(臀肉切り取り事件),さらに薬店経営者殺しの2週間ほど前に起こった野口寧斎の死も男三郎による毒殺ではないかと疑いをかけた。演歌師が男三郎を「ああ世は夢かまぼろしか 獄舎にひとり思い寝の」と歌ったことで全国に知られるようになった。事件の方は,義父と少年殺しは立証されず,薬店経営者殺害の罪で絞首刑にされた。
(関井光男)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報