草花は、播種(はしゅ)から発芽、開花、結実までの暦年の長さによって、一年草、二年草、多年草に分けられる。種子を播(ま)いてから1年以内に開花し、種子を結実して枯死するか、または寒さ、暑さのために枯死するものを一年草とよぶ。一般的には園芸上の観賞用草花をさすが、野山における草花も同様である。播種から結実までの長さは温度や日照によって左右され、日本では一年草の扱いをするが、温度や日照の十分な熱帯のような所では多年草となるものもある。種子の発芽適温や生育にあたっての耐暑性、耐寒性などによって、春播きと秋播きに区別される。なお、秋に播いて翌春開花するものを二年草とよぶこともあるが、草花類ではこれらを総称して、一、二年草として扱うことが多い。
[堀 保男]
種子の発芽温度が20℃以上を適温とするものが多く、高温、日長下でよく生育する。したがって春播き種子を夏から秋にかけて播くと、すぐ短日状態になるので十分成長しないうちに花芽をつけるものもある(アサガオ、秋咲きコスモス)。春播き種にはヒマワリ、ホウセンカ、マツバボタン、ヒャクニチソウ、ケイトウなどがある。
[堀 保男]
種子の発芽温度は、20℃内外が適温で、生育条件は涼しいほうを好む草花である。したがって開花も冬から春にかけてのものが多い。キンギョソウ、キンセンカ、スイートピー、ヒナゲシなどがある。
[堀 保男]
種子が発芽してから植物体(胞子体)が成体となり,開花結実して,その種子を散布して枯死するまでの生涯が1年のうちに完結する草本。球根などの栄養器官で越冬するものは,地上部が1年以内に枯死する場合も,一年草とはいわない。春咲き草本のように,発芽から枯死までが1年以内の期間に完結するものでも,暦年の2年にわたって生存するものは二年草(越年草)ということがある。また,地上部が枯れても,根茎などで越冬して,植物体に世代の移行がみられないものが多年草である。生物に種分化がおこるためには,遺伝子に生じた変異が集団の中にすみやかに拡散していく必要があるが,一年草のように生活史の短い植物では変異の拡散速度は相対的に速く,進化の速度も速まることが多い。被子植物の現生種が20万種を超えるほどに多様化しているのも,さまざまの生活環境に適応して分化した一年生草本が大きな部分を占めているからこそである。
執筆者:岩槻 邦男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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(森和男 東アジア野生植物研究会主宰 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…草本というのは,形態学的な定義に基づくものではなく,生育している形状を指したものである。 草本には,種子が発芽してから植物体が枯死するまでが1年以内のもの(一年草,暦年の2年にまたがるものを越年草といって区別することもある)と,たとえ地上部が枯死しても根茎などでなん年も生き続けるもの(多年草)がある。多年草のうちには常緑性の草本も含まれる。…
※「一年草」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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