地球の北半球も南半球も、熱帯、温帯、寒帯の三つに大別されるが、このうち、熱帯と温帯の中間にある漸移的な地域を亜熱帯と称する。暖温帯とほぼ同じ意味である。この名称はケッペンの気候区分にはないが、平均気温20℃以上の月が4~11か月まで、また20℃以下の月が1~8か月の範囲とされている。この定義でいうと、『理科年表』(国立天文台編)における日本国内80地点中約60%(50地点)が亜熱帯に該当する。このように、気候学的にはかならずしも明確な地域区分ではなく、厳密に地理的範囲を示すことはむずかしいことから、緯度25~30度あたりに中心をもつ中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)の影響を受ける地域とされている。世界の風系からいえば、高緯度へ向かう偏西風と赤道へ向かう貿易風の間に位置し、いわゆる発散域で、これを補うように下降気流が生じ高気圧が発達する。そのため、広く乾燥地域が分布し、ステップ気候(草原気候)や砂漠気候がみられる。北半球ではサハラ、アラビア、パキスタン、中国の華中・華南の平原、北米南部などの砂漠地域、南半球ではアフリカのカラハリ砂漠、オーストラリアの大砂漠などがあり、全陸地の4分の1を占めている。世界でもっとも高温な地域で、気温が20℃を超える月が4か月以上あるが、熱帯と違って、やや寒冷な冬を有する。森林は亜熱帯季節風(亜熱帯モンスーン)地域に点在するだけで、その占める面積は少ない。植物相だけからいえば、東アジアにおける亜熱帯地域は、屋久島(やくしま)南端あたりより南の台湾を含めた地域に限られる。
なお、ジェット気流のうち、中低緯度あたりのものを亜熱帯ジェットというが、かならずしも亜熱帯気候と地域的に一致していない。また、熱帯湖のうち、水温年較差や垂直方向の変化が大きい湖を亜熱帯湖と称する。インドのレグール土や、モロッコのティルス、北米南部のプレーリー土などを亜熱帯土という。
[福岡義隆]
多湿な中国の雲南などでは熱帯降雨林に引き続いてその北方に現れるのはクリガシ属、常緑のカシ類などの林で、台湾の北部などと同じ傾向を示し、森林の構成種属は本質的に日本の照葉樹林と変わらない。東アジアでは照葉林帯(照葉樹林帯)が亜熱帯に相当する。地中海やカリフォルニアの硬葉林帯(硬葉樹林帯)、フロリダの常緑広葉林帯(広葉樹林帯)も亜熱帯に対応し、南半球でもほぼこれらに対応する植生帯がある。
[大場達之]
温帯と熱帯の中間地域で,緯度20℃~30°あたりをいうが,範囲の決め方は学者によって異なる。気候帯としてはケッペンの月平均気温20℃以上が4~11ヵ月,20℃以下が1~8ヵ月の範囲とした定義が一般的である。太陽高度の季節変化で高温期と低温期が生ずる。通年亜熱帯高気圧の支配下にある地域は高温乾燥の天候が卓越し,世界の乾燥地域の大部分を占める。冬季偏西風帯に属する地域は降雨があるので,亜熱帯気候は乾燥・湿潤の2つに大別される。
執筆者:山下 脩二
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