鏡王女(かがみのおおきみ)(読み)かがみのおおきみ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

鏡王女(かがみのおおきみ)
かがみのおおきみ
(?―683)

万葉集』初期の女流歌人。鏡姫王、鏡女王とも記される。系統未詳。本居宣長(もとおりのりなが)以来の額田王(ぬかたのおおきみ)の姉かとする説、その墓の位置から舒明(じょめい)天皇皇女かとする説などがあるが、決めがたい。初め天智(てんじ)天皇の愛を受けたようだが、のち藤原鎌足(かまたり)の正室となった。いまの興福寺は、鎌足が病気のとき、鏡王女によって建立された。683年(天武天皇12)7月没。その前日、天武(てんむ)天皇が見舞っている。作品は短歌5首。天智天皇、鎌足との相聞(そうもん)、額田王との唱和の歌がある。作風は機知的、社交的性格をもつが、早くも内省的叙情性の高い歌もある。

 秋山の木(こ)の下がくり逝(ゆ)く水の吾(われ)こそ増さめ思ほすよりは
[橋本達雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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