相聞(読み)ソウモン

デジタル大辞泉 「相聞」の意味・読み・例文・類語

そう‐もん〔サウ‐〕【相聞】

互いに相手のようすを尋ねること。消息を通わせ合うこと。
万葉集で、雑歌ぞうか挽歌ばんかと並ぶ三大部立ての一。男女親子兄弟姉妹友人など親しい間柄で贈答された歌が含まれるが、特に恋の歌が多い。

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精選版 日本国語大辞典 「相聞」の意味・読み・例文・類語

そう‐もんサウ‥【相聞】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「もん」は「聞」の呉音 )
  2. 相互に相手の様子を尋ねること。消息を通じあうこと。互いに通信、連絡、挨拶(あいさつ)などをかわすこと。
    1. [初出の実例]「且上父母相聞、既云聖徳無量不備陳。故但略歎三徳爾也」(出典:勝鬘経義疏(611)歎仏真実功徳章)
    2. [その他の文献]〔漢書‐霍光伝〕
  3. 「万葉集」において、歌を内容から分類した名称の一つ。雑歌(ぞうか)挽歌(ばんか)とともに三大部立の一つ。夫婦、恋人、または親子、兄弟姉妹、友人など、親しいものの間で、恋慕あるいは親愛の情をのべた歌がこれに属するが、大部分は男女の恋愛感情をうたった歌。「雑歌」が公的な場における歌という性格をもつのに対し、私的な感情を伝える歌をまとめた名称。あいぎこえ。
    1. [初出の実例]「相聞」(出典:万葉集(8C後)二)
  4. そうもんか(相聞歌)」の略。
    1. [初出の実例]「さらば、いとをしといふ事かきて、さうもむにたべと侍しに」(出典:弁内侍日記(1278頃)建長四年)

あい‐ぎこえあひ‥【相聞】

  1. 〘 名詞 〙 「万葉集」の歌の分類上の名称の一つである「相聞(そうもん)」の訓読賀茂真淵が「万葉考」で唱えた。
    1. [初出の実例]「相聞(アヒギコエ)、こは相思ふ心を互に告聞ゆれば、あひぎこえといふ」(出典:万葉考(1769‐1835)二)

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改訂新版 世界大百科事典 「相聞」の意味・わかりやすい解説

相聞 (そうもん)

恋の歌。相聞という語はもともと《文選(もんぜん)》をはじめ内外の諸文献にも見えることばで,消息を通じるなどの意を表すが,《万葉集》においては,漢詩における〈贈答〉にかわり,雑歌ぞうか),挽歌ばんか)と並ぶ三大部立て名の一つとして用いられ,親しい人と情を通じあう歌を収める。親子・兄弟間などの場合もあるが,男女間の愛情に関するものが中心を占める。原義からすればすべて贈答歌であるべきだが,実際には独詠歌や伝承歌なども多く含まれる。相聞歌の源流は歌垣(うたがき)の集団歌謡にまでさかのぼるが,万葉時代には正述心緒寄物陳思,譬喩など種々の表現様式も分化し抒情詩としての完成を見せている。私的な内容を盛るだけに短歌形式の作が多いが,柿本人麻呂には〈石見相聞歌〉と称される長歌体の名作もある。《古今集以後勅撰集等では,部立ての名称としても〈相聞〉にかわって〈恋〉の名称が用いられるようになる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「相聞」の意味・わかりやすい解説

相聞
そうもん

「雑歌(ぞうか)」「挽歌(ばんか)」と並ぶ『万葉集』の三大部立(ぶだて)の一つ。「相聞」の語は中国の文献に多くみられる通用語で、そのもともとの意義は、互いに思いを伝達することであった。『万葉集』では「相聞往来歌」(巻11、12)とも称し、日常的な人間関係のなかで交わされた私情の歌々を概括するものであった。男女の間で交わされた恋愛歌を中心とするが、すべてが恋歌ではなく、大伯皇女(おおくのひめみこ)が弟大津皇子について歌った「わがせこを大和(やまと)へ遣(や)るとさ夜更(よふ)けて暁露(あかときつゆ)にわが立ちぬれし」(巻2・105)のように、親子・兄弟などの間で交わされたものも「相聞」に収められている。男女間を主とする私情伝達の歌で、広義の恋歌ということができる。『万葉集』は、巻2、4、8、9、10、11、12、13、14の諸巻に「相聞」の部立をもち、収める歌数は1750首に上る。『万葉集』の全歌数の3分の1を超える。これらは表現の仕方によって、正述心緒(せいじゅつしんしょ)、寄物陳思(きぶつちんし)、譬喩(ひゆ)などと分類されている。こうした私情の歌こそ歌を支える広い基盤であり、そのなかで叙情詩としての歌が育てられた。

[神野志隆光]

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百科事典マイペディア 「相聞」の意味・わかりやすい解説

相聞【そうもん】

雑歌(ぞうか)・挽歌(ばんか)とともに《万葉集》の分類項目の一つ。恋愛の歌が多いが,もともと相聞往来の意で,親子,兄弟,友人間の愛情を示したものをも含んでいる。《古今和歌集》以後〈相聞〉は〈恋〉という名称になった。
→関連項目大伴坂上郎女雑歌

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「相聞」の解説

相聞
そうもん

雑歌(ぞうか)・挽歌(ばんか)とともに「万葉集」の3大部立の一つ。巻2・4・8~14の各巻にたてられている。漢籍の書簡類に多用される語で,元来は相手のようすを尋ねる,消息を通じ合うの意。転じて,私的な心のうちをのべる意となり,「万葉集」ではとくに男女間の私情を詠んだ恋の歌の意に用いるが,恋歌のほかに,親子・兄弟・姉妹・知友などの間の私情をのべ伝える歌も混在する。「古今集」以下の勅撰和歌集の恋歌にほぼ相当するといえるが,巻8・10では相聞の上位概念として四季をおいて,春相聞・夏相聞・秋相聞・冬相聞に分類している。

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普及版 字通 「相聞」の読み・字形・画数・意味

【相聞】そうぶん

消息。

字通「相」の項目を見る

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デジタル大辞泉プラス 「相聞」の解説

相聞

早坂久子による戯曲。1960年、第6回新劇戯曲賞(のちの岸田国士戯曲賞)を受賞。

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世界大百科事典(旧版)内の相聞の言及

【譬喩歌】より

…《万葉集》中の相聞(そうもん)の歌を表現様式上から3分類した名称の一つ。正述心緒歌(ただにおもいをのぶるうた)(心に思うことを直接表現する),寄物陳思歌(ものによせておもいをのぶるうた)(物に託して思いを表現する)の2分類と並び,物だけを表面的に歌って思いを表現する,いわゆる隠喩(いんゆ)の歌をいう。…

※「相聞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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