日本大百科全書(ニッポニカ) 「防汚ガラス」の意味・わかりやすい解説
防汚ガラス
ぼうおがらす
self-cleaning glass
ガラス表面に光触媒作用を有する酸化チタン(Ⅳ)TiO2をコーティングしたガラス。TiO2の光触媒作用には、紫外光が当たることによって有機物を分解する作用と、紫外光が当たることで水が付着しても水滴にならずに膜状に広がる(超親水性)作用の、二つの作用を有する。この二つの性質をもつTiO2をガラス表面にコーティングすることで、防汚性が発現する。ガラスの汚れの原因は、おもに有機物と砂を主成分とする埃(ほこり)である。有機物は、TiO2のもつ光分解性によって除去される。埃は、超親水性を有するガラス表面に雨が当たることで、埃とガラスの間に水が入り込み、ガラスから浮いた状態になる。同時に、膜状に広がった水によって洗い流される。防汚ガラスのTiO2は、ゾル‐ゲル法、CVD法(化学蒸着法)、スパッタ法(加速したイオンをターゲットに衝突させて原子や分子を放出させることにより、基板上へ薄い膜を形成する方法)でコーティングされる。もっとも一般的なのはゾル‐ゲル法である。原料液をスプレーコートし、SiO2媒体中にTiO2微粒子が分散された膜が形成される。大規模設備を必要とせず現場施工が可能なため、建材分野で適用される。CVD法は、ガラスの製造プロセスの過程で原料ガスを吹き付けることで作製できる。オンラインプロセスのため安価であるとともに、高温プロセスのためガラスと膜の密着性が良い。スパッタ法は、平滑性の高い膜を作製できる特徴がある。
[伊藤節郎]