酸化チタン(読み)さんかちたん(英語表記)titanium oxide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化チタン」の意味・わかりやすい解説

酸化チタン
さんかちたん
titanium oxide

チタンと酸素の化合物。チタンの酸化数によって、3種の酸化物が知られている。

(1)酸化チタン(Ⅱ) 化学式TiO、式量63.9。酸化チタン(Ⅳ)TiO2とチタンを真空中で1550~1750℃に加熱すると生ずる黒色結晶であるが、正確にTiOの組成を得ることは困難である。

(2)酸化チタン(Ⅲ) 化学式Ti2O3、式量143.76。酸化チタン(Ⅳ)を水素と四塩化チタンTiCl4との混合気流中で1000℃に加熱して得られる紫色結晶である。

(3)酸化チタン(Ⅳ) 化学式TiO2、式量79.88。二酸化チタンともよばれ、チタンの酸化物のなかではもっとも安定である。チタンの水和酸化物を強熱すると得られる無色粉末であるが、天然には、ルチル金紅石)、板チタン石鋭錐石(えいすいせき)(アナタース)のそれぞれ結晶構造の異なる鉱物として産出する。白色顔料(チタンホワイト)、磁器原料、研摩剤、医薬品、化粧品などの用途がある。

 これらのほか、金属チタンの結晶中に酸素が吸蔵されて生成する不定比結晶相TiOxx<0.5)も知られている。

[岩本振武]


酸化チタン(データノート)
さんかちたんでーたのーと

酸化チタン(Ⅲ)
  Ti2O3
 式量  143.76
 融点  ―
 沸点  ―
 比重  4.6
 結晶系 三方
 分解点 2130℃

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸化チタン」の意味・わかりやすい解説

酸化チタン
さんかチタン
titanium oxide

(1) 酸化チタン (II)   TiO 。黒色柱状晶。比重 4.93,融点 1750℃。 (2) 酸化チタン (III)   TiO2O3 。紫色結晶。比重 4.6。 (3) 酸化チタン (IV)   TiO2 。天然には板チタン石,鋭錐石,ルチルとして産出。空気中でチタンを強熱すると,無色粉末として得られる。融点 1855℃。ファインセラミックスの原料。

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