酸化数Ⅱ,Ⅲ,Ⅳの化合物が知られるが,広く用いられているのは酸化チタン(Ⅳ)である。
化学式TiO2。構造の違う3種の変態が知られ,いずれも天然にルチル(正方晶系),板チタン石(斜方晶系),アナターゼ(正方晶系)として産する。またチタン鉄鉱の主成分でもある。工業的に大量につくられ,日本における総生産量は10万t以上で,その90%以上が白色顔料のチタン白として使われており,最大の隠ぺい(蔽)力をもつ無機顔料である。硫酸チタン(Ⅳ)水溶液あるいは塩化チタン(Ⅳ)の加水分解によってつくられ,前者の場合の製品はアナターゼ型,後者はルチル型と呼ばれる。市販品はアナターゼ型が多い。比重は,アナターゼ型3.84,ルチル型4.26,板チタン石型4.17。熱濃硫酸に溶け,硫酸チタン(Ⅳ)Ti(SO4)2となる。冷・温水,濃塩酸,濃硝酸には溶けにくい。顔料のほかに,人絹のつや消し,製紙,ゴムの充てん剤として用いられ,強誘電体のチタン酸バリウムの製造原料でもある。チタン(Ⅳ)塩水溶液にアンモニアを加えると得られるコロイド状沈殿は水和酸化物TiO2・nH2Oで,チタン酸ともいい,塩酸や弱酸にも溶ける。
化学式TiO。金属チタンとTiO2の計算量混合物を真空中1600℃に熱するか,TiO2を2000℃で高圧水素によって還元して得られる黒色立方晶。比重4.93,融点1750℃。希塩酸に溶けない。
化学式Ti2O3。金属チタンとTiO2の計算量混合物を真空中1600℃に熱して得られる暗紫色粉末。比重4.6,2130℃で分解する。硫酸に溶け,硝酸や塩酸に溶けない。
金属チタンとTiO2との各種組成の混合物を真空中150℃で長時間熱するとTi3O5,Ti4O7,Ti5O9,Ti6O11,Ti7O13,Ti8O15,Ti9O17,Ti10O19など,一般式TinO2n-1で表される酸化チタンが得られる。
化学式TiO3・2H2O。水和酸化物TiO2・H2Oを硫酸に溶かし,硫酸カリウムK2SO4の存在下,過酸化水素水で酸化すると得られる黄色固体。酸に溶ける。構造はTi(OH)3(OOH)であるとされている。
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
チタンと酸素の化合物。チタンの酸化数によって、3種の酸化物が知られている。
(1)酸化チタン(Ⅱ) 化学式TiO、式量63.9。酸化チタン(Ⅳ)TiO2とチタンを真空中で1550~1750℃に加熱すると生ずる黒色結晶であるが、正確にTiOの組成を得ることは困難である。
(2)酸化チタン(Ⅲ) 化学式Ti2O3、式量143.76。酸化チタン(Ⅳ)を水素と四塩化チタンTiCl4との混合気流中で1000℃に加熱して得られる紫色結晶である。
(3)酸化チタン(Ⅳ) 化学式TiO2、式量79.88。二酸化チタンともよばれ、チタンの酸化物のなかではもっとも安定である。チタンの水和酸化物を強熱すると得られる無色粉末であるが、天然には、ルチル(金紅石)、板チタン石、鋭錐石(えいすいせき)(アナタース)のそれぞれ結晶構造の異なる鉱物として産出する。白色顔料(チタンホワイト)、磁器原料、研摩剤、医薬品、化粧品などの用途がある。
これらのほか、金属チタンの結晶中に酸素が吸蔵されて生成する不定比結晶相TiOx(x<0.5)も知られている。
[岩本振武]
酸化チタン(Ⅲ)
Ti2O3
式量 143.76
融点 ―
沸点 ―
比重 4.6
結晶系 三方
分解点 2130℃
【Ⅰ】酸化チタン(Ⅱ):TiO(63.87).一酸化チタンともいう.二酸化チタンを金属チタンとともに1500 ℃ に加熱すると得られる.黒色の等軸晶系柱状晶.密度4.93 g cm-3.融点1750 ℃.希硫酸に可溶,硝酸に不溶.保護膜,蒸着膜材料に用いられる.[CAS 12137-20-1]【Ⅱ】酸化チタン(Ⅲ):Ti2O3(143.73).三酸化二チタンともいう.二酸化チタンを金属チタンとともに700 ℃ に熱すると得られる.紫黒色の六方晶系結晶.密度4.6 g cm-3.2130 ℃ で分解する.冷水,熱水に不溶,硫酸に可溶,塩酸,硝酸に不溶.非常に安定であるが,クロム酸や過マンガン酸などの酸化性の酸により二酸化チタンに酸化される.光学薄膜,光触媒材料などに用いられる.[CAS 1344-54-3]【Ⅲ】酸化チタン(Ⅳ):TiO2(79.88).二酸化チタンともいう.[CAS 13463-67-7:TiO2(ルチル)][CAS 1317-70-0:TiO2(アナターゼ)]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…酸化数II,III,IVの化合物が知られるが,広く用いられているのは酸化チタン(IV)である。
[酸化チタン(IV)]
化学式TiO2。…
…酸化数II,III,IVの化合物が知られるが,広く用いられているのは酸化チタン(IV)である。
[酸化チタン(IV)]
化学式TiO2。…
…酸化数II,III,IVの化合物が知られるが,広く用いられているのは酸化チタン(IV)である。
[酸化チタン(IV)]
化学式TiO2。…
※「酸化チタン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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