隠亡(読み)オンボウ

デジタル大辞泉 「隠亡」の意味・読み・例文・類語

おん‐ぼう〔‐バウ〕【隠亡/隠坊/御坊】

古く、火葬墓所番人を業とした人。江戸時代賤民の取り扱いをされ差別された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「隠亡」の意味・わかりやすい解説

隠亡
おんぼう

隠坊、熅坊などと書くが御坊の意と思われる。火葬の処理人、墓守のことをいったが、もと下級法師の役であったという。本居内遠(もとおりうちとお)の『賤者考』によれば、熅房(坊)は熅法師、煙法師と書くべきであり、下火は僧のすべきことで、古くは皆、徳行ある法師に付せしことなりとある。旧時のことだが、伊賀地方(三重県中西部)ではおん坊のことをハチといって、土師と書いていた。また備中(びっちゅう)地方(岡山県西部)では、隠亡といわれる者がおり、亡者の取り扱い、あるいは非人番などをしていた。正月には村内へ茶筅(ちゃせん)を配るので、茶筅ともいわれていた。彼らは竹細工のほか渡し守をしているものもあった。水呑百姓(みずのみびゃくしょう)より下級とされ、賤民(せんみん)として差別されて、普通の農民とは通婚しなかった。関東地方における番太と同じ役、村の見張番などもやった。

[大藤時彦]

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