竹細工(読み)たけざいく

精選版 日本国語大辞典 「竹細工」の意味・読み・例文・類語

たけ‐ざいく【竹細工】

〘名〙 竹を材料とする細工。また、その細工物
※古文真宝笑雲抄(1525)四「竹工とは竹細工する者の、竹の中の節を去けて、陶瓦と云て、土でした瓦にかへて土瓦の代にして楼を葺たぞ」

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デジタル大辞泉 「竹細工」の意味・読み・例文・類語

たけ‐ざいく【竹細工】

竹を材料にして細工物を作ること。また、その細工物。

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改訂新版 世界大百科事典 「竹細工」の意味・わかりやすい解説

竹細工 (たけざいく)

竹を用いて日常の容器や調度,また楽器や工芸美術品を作ることを総称していう。竹はアジア諸地域に豊富に産し,その材質は強く弾力に富み,また耐久力にも優れている。そのため古くから建築用材や日常の生活用具に用いられ,ことに中国,日本では各種の技法を発達させ,竹細工によって作られる品々も多彩である。

竹細工がとくに著しい発達をみたのは,竹の産出が多く種類も豊かであった中国の華南地方で,中国では黄帝の神話にもすでに笊籬(そうり)工の名が現れ,紙の発明まで中国の文書は竹簡を主要な材としていた(木簡)。中国の竹細工はまた,朝鮮半島や日本にも影響を与え発達させている。日本では縄文時代晩期の遺跡から,笊(ざる),籠(かご),籃胎漆器(らんたいしつき)などが出土している(青森県亀ヶ岡,是川(これかわ))。伝世された遺品としては,法隆寺献納宝物中の竹厨子(たけずし)(東京国立博物館)が最古で,行信僧都奉納あるいは小野妹子請来とも伝えるが,中国の隋・唐代の竹工技術をしのばせる遺品である(厨子)。

 室町時代中期以降になって竹細工を美術工芸にまで高める働きをしたのは,茶の湯の流行である。ことに侘茶が盛んとなって,一重切花生(ひとえぎりはないけ)や二重切花生のような日本的竹細工が発達した。茶筅(ちやせん)や茶杓(ちやしやく)も竹細工で,ことに茶杓は茶人みずからが刀をとって作った名品が残されている。また茶室数寄屋造に建築材として竹が多く用いられ,装飾的な天井,下地窓(したじまど),床柱や光悦垣,建仁寺垣といったなどに利用された。また正倉院宝物中にも,笛,笙(しよう),竽(う)などの楽器や最勝王経帙(ちつ),華籠(けこ)などが伝存している。平安時代から鎌倉時代にかけては遺品も乏しく,その技術や発達の跡をたどることができない。

 明から清代にかけて,中国では文人趣味の文房具類が多く作られた。なかでも筆管,筆筒,腕枕(わんちん),聯(れん)などで,山水や花鳥,詩文などを刻した竹刻が盛行し,朝鮮の李朝,日本では江戸時代後期の文人の間でもてはやされ,これらも竹細工の発達を促した。明治・大正期には江戸時代の伝統を受けつぎ,茶道具などに精巧な作品が作られたが,昭和になって伝統的な技法の中に現代的な感覚と意匠を盛り込む努力がはらわれるようになった。飯塚琅玕斎(いいづかろうかんさい)(1890-1958)や生野祥雲斎(しようのしよううんさい)(1904-74)らは伝統の継承と現代的な展開を図った代表的竹工芸家である。

日本に産する竹で通常利用されるものに,マダケ(真竹,苦竹(にがたけ)),メダケ(女竹),ネマガリダケ(根曲竹),モウソウチク(孟宗竹),ハチク(淡竹),ホテイチク(布袋竹,五三竹),シホウチク四方竹),ゴマタケ胡麻竹),クロチク黒竹,紫竹(しちく),烏竹(うちく)),ヤダケ(矢竹),斑竹(はんちく),雲文竹(うんもんちく),煤竹(すすだけ)(苦竹,メダケなどの煤けたもの)などがある。

 まず竹は丸竹物として,その素材のままの姿で利用される。丸竹切による花入や茶筅,茶杓,結界などの茶道具は,その感触がよく,茶人の心をとらえたものといえる。とくに茶室建築,数寄屋建築などには,木材とともに竹材の利用は重要な位置を占めている。ついで竹はその特性である弾力性を利用して,これを裂き,笊や籠などの編組み材料とされる。その編組みの手法には直線と曲線とからなるきわめて自由な変化のある造形美に,他の材質には求められない竹材独自のものがある。またこれら竹細工は,その肌の淡白な色合いによる清純な材質感とあいまって,日本において特異な発展をみた。編組みの素材としてもっともよく使用されるのは苦竹である。竹幹が太くて光沢があり,細割りにしても弾力性があり,伸縮性が少ないことが特質で,比較的肉が薄い。板割り,柾(まさ)割りにも適し,煤竹,白錆竹,磨竹,染竹としても多くの製品が作られる。ハチクもこの苦竹の一種で,苦竹より少し小さいが表皮が緻密であり,光沢に富んで竹幹の細割りに適している。編組みの作業の基本は竹拵(ごしら)え,竹へぎ作りと呼ばれる。できあがった材料は用途別に,縦竹,回し竹,縁当竹,縁巻竹,力竹,刺竹などという。編組手法には数十種あるが,その基本的な編み方に四ッ目,八ッ目,網代(あじろ),茣蓙目(ござめ),縄目などがある。これらの編み方を基本として多種多彩な意匠が考案されるので,一つの作品を作る場合にもむしろ1種類の編組みでまとめることは少ない。何種類もの編組みを組み合わせ応用して底編み,胴編みと変化をつけながら,縁巻きをして完成させるのである。おもな素材と製品については表を参照されたい。

 中国や東南アジアでは,今日もなお笊,籠などが作られている。日本でも美術工芸的な作品はおもに東京,京都で作られ,古くからの産地である大分,奈良,佐渡などでは,伝統的な技法を生かして生産が続けられている。またフランスの女流工芸作家ペリアンC.Perriand(1903-99)によって,日本古来の弓製作の技術が応用され,現代的な竹製家具も作られている。
タケ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「竹細工」の意味・わかりやすい解説

竹細工
たけざいく

竹細工とは、竹を横にひいたり、何本かに縦に割ったり、さらに細かく削ってひご(籤)としたもので、組んだり編んだりした竹製品のことをいう。わが国は良質の竹の産地に恵まれているため、原始のころから柔軟にして堅牢(けんろう)、かつ優雅な竹製品が、いろいろな生活用具として、あるいは武器、農具漁具として発展してきた。17世紀には、籠(かご)編、籠結、笊(ざる)編とよばれる竹細工の専門職人(竹細工師)が生まれた。

 竹細工の特徴は、なんといってもその編組みにある。編み方の基本は三つ目と四つ目で、通常用いられている編み方だけでも、笊編、網代(あじろ)編、六つ目、石畳、麻の葉、縄編、蜘蛛(くも)巣、松葉、青海、鉄線、氷裂編、束編、千条編、編絣(かすり)など数十種類のものがあげられる。なお竹には、割れる・折れるという素材自身の宿命的な性質があるので、編組みの材料は、職人(作家)が自らよい竹を吟味して、切出しで薄く長く剥(は)いでつくっていく。竹細工の工具には、竹をひく弦(つる)掛け鋸(のこ)と、割るための竹割り鉈(なた)・小刀、削る切出し小刀・竹削り台、穴をあける鼠歯錐(ねずみはきり)・四つ目錐・三つ目錐などがある。

 竹材を、製品を構成する部分に分けてみると、タテ(底部・側面の骨になる材料)、ヘン(編み上げていく材料)、ヘリ(縁を巻き上げる材料)の3種になる。いずれも竹の外皮のほうをおもに薄く剥いで使用する。工芸作家などの場合は、その使用目的に従って、竹材を厳選して用いているが、地方の民具としての竹細工は、その土地に生産する竹材を利用し地域性のある、民族的な細工物がつくられている。

 おもな竹細工の産地と製品には、次のようなものがあげられる。岩手県二戸(にのへ)の根曲(ねまがり)竹細工(椅子(いす)・籠(かご)・行李(こうり))。群馬県高崎の竹皮細工(パン籠・盛(もり)器)。埼玉県川口の釣竿(つりざお)細工。神奈川県小田原の竹長さ計り。静岡県の駿河(するが)竹千筋細工。奈良県の茶杓(ちゃしゃく)、高山茶筅(ちゃせん)。愛媛県松山の「くやちゃら編」細工。大分県別府の、油抜きをした平ひごで編み上げた竹細工。

[秋山光男]


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事典 日本の地域ブランド・名産品 「竹細工」の解説

竹細工[竹工]
たけざいく

東海地方、三重県の地域ブランド。
津市などで製作されている。江戸時代中期、津市大門町で籠師によって始められたという。現在も花籠などが伝統的な製法を守ってすべて手作業でつくられる。三重県伝統工芸品。

竹細工[竹工]
たけざいく

中国地方、鳥取県の地域ブランド。
鳥取市・倉吉市・米子市で製作されている。江戸時代から本格的に生産が始まったという。主に真竹の竹編や黒竹の丸竹製品がつくられる。鳥取県郷土工芸品。

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