かくし‐ばいじょ‥バイヂョ【隠売女】
- 〘 名詞 〙
- ① 江戸時代、売春婦をいう。江戸新吉原など公許の遊郭に抱えられた遊女、および街道の旅籠屋(はたごや)に認められていた一定数の飯盛女(めしもりおんな)以外で、売春を行なった女。俗に夜鷹、比丘尼(びくに)、ころび芸者、惣嫁(そうか)、ぴんしょ、茶屋女などともいう。御定書では、隠売女は新吉原へ交付され、二年の年季を勤めさせた。隠し遊女。売女。かくしばいた。
- [初出の実例]「自今隠売女一切差置申間敷候」(出典:徳川禁令考‐後集・第一・巻七・寛政元年(1789)七月二二日)
- ② 江戸時代、売春のこと。公許を受けていない女に売春をさせたり、公認されていない場所で売春すること。
- [初出の実例]「上州湯宿村に而隠売女いたし候女とも蝦夷地江可差遣哉」(出典:徳川禁令考‐後集・第三・巻二一・寛政一三年(1801))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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世界大百科事典(旧版)内の隠売女の言及
【過料】より
…幕府刑法においては,1718年(享保3)以降体系化が進み,過料(3貫文または5貫文),重き過料(10貫文),身上(しんしよう)に応じ過料(財産にしたがって納付額が定められる),小間(こま)に応じ過料(家並みに課し,間口に応じて割り付ける),村高に応じ過料(村に対し,石高に応じて課する)などに整理された。いずれも庶民に対する刑罰として,賭博罪,隠売女(かくしばいじよ)をはじめ各種の犯罪に広く適用され,また過料のうえ戸〆(とじめ)など二重しおきとされることも多い。3日間の納期限を過ぎると[手鎖](てじよう)で代えられ,逆に手鎖刑も過料で代替しえた。…
【刑罰】より
…これらより軽い刑には種々あるが,[手鎖](てじよう),過料,急度叱(きつとしかり),[叱]がよく用いられた。それ以外にも家内に謹慎させる戸〆(とじめ),非人の身分に編入する[非人手下](ひにんてか),女性に対する剃髪(ていはつ),女性に対する労役刑である[奴](やつこ)刑,〈新吉原町へ取らせ遣わす〉という隠売女(かくしばいじよ)を吉原に下付して奴女郎にする刑等があった。(2)は[入墨]刑,[敲](たたき)刑によって構成されている。…
【私娼】より
…したがって各地に多くの私娼が出現し,なかには堂々と営業を続けて,公娼をしのぐほどのものも珍しくはなかった。表面上は公娼制堅持の幕府にとって,私娼はすべて隠売女(かくしばいじよ)であったが,法令に出てくる名称だけでも風呂屋女,茶屋女,茶立女(ちやたておんな),給仕女,女踊子,綿摘(わたつみ),比丘尼(びくに),芸者などがあり,その存在を見過ごせなかった事情を物語っている。実際の私娼の名称は,俗称を含めてはるかに多く,表向きの職業や居住地名にちなんで命名されている。…
【連座(連坐)】より
…江戸時代に入ると,犯罪人の親族に刑事責任を負わせる縁坐については反対論が起こり,江戸時代前半にはなお厳しく行われていた縁坐制が,8代将軍徳川吉宗によって制限されるに至ったのに対して,同じく他人の犯罪について刑事責任を負うものながら,親族以外の者が処罰される連坐は,犯罪の一般的予防のためばかりでなく,不完全な公権力の警察事務を人民に分担させるためにも有用と考えられた。しかし幕府法上の縁坐は,博奕(ばくち)・隠鉄砲・隠売女・失火その他の犯罪に,名主・組頭・五人組・総百姓・家主・地主・両隣・町内などが,過料・手鎖・押込・叱などの刑に処せられるもので,刑罰が軽微であるうえ,連坐が科さるべき犯罪の種類も,連帯責任・相互監視によって犯罪を未然に防ぎ,犯罪摘発を容易にするのに適したものに限定されており,近世前期に比してかなり緩和されている。【林 由紀子】
[中国]
前4世紀中ごろ,戦国時代の秦で,商鞅(しようおう)が什伍の組織をつくり,1人が罪を犯したとき,その他の人々を連坐する制度をつくったのが,連坐の語の初出の例である。…
※「隠売女」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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