明治時代に司法省によって編纂された江戸幕府の法制に関する史料集。はじめ司法卿大木喬任の命で司法属菊地駿助が,その死後は司法大臣官房庶務課が編纂を担当し,1878年から95年にかけて出版された。前聚6冊,後聚4冊から成り,前聚は幕府の法令を分類収録し,後聚は《公事方御定書》編纂に関する諸資料を幕府が一書にまとめた《科条類典》の各条に関係判例等を付加したほか,《御定書ニ添候例書》《赦律》などの刑事史料を収めている。本書には,当時司法省に所蔵されていた幕府伝来の記録類のように,その後焼失した史料なども入っており,また幕府官撰法令集たる《御触書集成》に欠けている幕末の法令も収集されていて,江戸時代研究の基本史料である。昭和初年に複製本が出版されたが,1958年から法制史学会によって校訂がおこなわれ,《棠蔭秘鑑》《刑典便覧》等の新史料と編年索引を付して前集6冊,後集4冊,別巻1冊として刊行されている。
執筆者:林 由紀子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸幕府の法令集。明治初年に各省ではその管轄事項に関する史料集を刊行したことが多いが、そのなかで、司法省の『徳川禁令考』62巻、『徳川禁令考 後聚(こうしゅう)』40巻は出色のものである。前者は、江戸幕府の法令を公家(くげ)、武家、寺社、庶民、全国総類、外国に分類収録し、後者は、1742年(寛保2)に幕府の制定した公事方御定書(くじかたおさだめがき)の編纂(へんさん)の史料を、各条ごとに収録した『科条類典』(1767)を基礎にして、これに関係法令、先例などを加えたものである。両者が江戸幕府の法制史の研究に必備の書であることはいうまでもないが、同時代の経済、政治、社会などの研究にも必携の書である。いくつかの刊本があるが、最新のものは、法制史学会編・石井良助校訂のもので、関係史料のほか法令の編年索引を加えた別巻がある。
[石井良助]
『法制史学会編、石井良助校訂『徳川禁令考』前集・後集および別巻全11冊(1959~61・創文社)』
江戸幕府の法制史料集。102巻。司法省編。1878~84年(明治11~17)に前聚・後聚合計35冊が出版され,94年から翌年にかけて,あらためて前聚62巻6帙,後聚40巻4帙が刊行された。1929年(昭和4)から「司法資料」として頒布され,31年以降吉川弘文館から出版。59年には別巻を追加して,司法省蔵版法制史学会編・石井良助校訂「徳川禁令考」(創文社)を刊行。前聚は法制禁令で,史料は幕府引継書を中心とする。調査では「教令類纂」が指針となった。後聚は刑律条例を収録し,「科条類典」を基底においた編纂である。別巻には「享保度法律類寄」「寛政刑典」などを追録。若干の偽書の混入が指摘されるが,編纂の価値は高い。
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…奉行のほかは他見を禁じ,1条たりとも抜書きを許さぬ極秘文書であった。伝存する写本ははなはだ乏しく,とくに上巻はそうであるが,《徳川禁令考》後集(1959‐60)は,実質的に《科条類典》の全内容を刊行したもので,編集者は巻章節を付し,さらに関連史料を加えている。【平松 義郎】。…
…これらの規定は行軍・布陣・戦闘中の行動,指揮命令の順守,敵地味方地における秩序安寧の維持にわたり,いわゆる抜駆けの高名(こうみよう),けんか口論,他陣への混入,放れ駒を禁止するなど,個々にきわめて具体的に規定されている。徳川氏の軍法は《徳川禁令考》に収録され,その全容をうかがいうるが,その条目は幕末に至るまで大差ない内容であった。【岩沢 愿彦】。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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