日本大百科全書(ニッポニカ) 「隣接権条約」の意味・わかりやすい解説
隣接権条約
りんせつけんじょうやく
歌手や演奏家などの実演家、レコード製作者、放送事業者の3者の著作物利用に関して与えられる権利を著作隣接権といい、これを保護する国際条約を隣接権条約という。
1961年に成立した同条約はその後イギリス、ドイツ、フランスなど主要先進国をはじめ多くの国が加入して、締約国は30か国を超え、国際的に定着するに至った。わが国は、1971年(昭和46)に施行された現行の著作権法で、同条約にならって著作隣接権制度を導入していたが、国内での制度定着には時間がかかり、その定着状況を見極める必要があったことと、当時同条約の締約国がわずかであったことにより、同条約への加入を見送っていた。しかし、1989年(平成1)に至り、加入を阻む要因がすべて解消したとの判断に基づき、同条約への加入を果たし、同年10月26日わが国について効力が生ずるに至った。なおこの条約加入以前に、一般に「隣接権条約」と呼称されていた「実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護に関する条約」は、国内法上「実演家等保護条約」とよばれることになった。
[半田正夫]