日本大百科全書(ニッポニカ) 「雑食動物」の意味・わかりやすい解説
雑食動物
ざっしょくどうぶつ
動物性の食物と植物性の食物をあわせて摂取する動物をさす。このような食性を雑食性という。この食性の動物は食物の選択範囲も広いことが多く、食物条件の変化が大きい環境に生息しやすいと考えられる。人家近くにすむスズメ、ヒヨドリ、カラスや、汚れの進んだ池や川でもよく育つフナ、コイ、オイカワ、下水道をすみ場所として利用するドブネズミなど、人間の手の加わった環境に多いのも、この動物の特徴である。さまざまな食物を摂取できるものの、あらゆる環境にはすめず、相対的な食物や生息場所の好み、またこれらの好みの重なる種との競争などによって生息域は制限されている。たとえば、オイカワはアユと、ドブネズミはクマネズミと生息場所をめぐって競争関係にあることが知られている。雑食動物であっても季節や場所によって食性が偏りうる。秋の田でイネの籾(もみ)を食害するスズメは、春から夏の繁殖期には昆虫を多く食べるし、イノシシは山地では植物の根や果実から昆虫の蛹(さなぎ)、カエル、ミミズまで食べる典型的な雑食性であるが、農耕地周辺では作物への依存度を強める。発育段階のある時期だけ雑食性のものもいる。
[高村健二]