ヒヨドリ(読み)ひよどり(英語表記)bulbul

翻訳|bulbul

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒヨドリ」の意味・わかりやすい解説

ヒヨドリ
ひよどり / 鵯
bulbul

広義には鳥綱スズメ目ヒヨドリ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この科Pycnonotidaeの鳥は16属118種があり、アフリカのみに生息するものは58種、ほかはインド、東南アジアなどに分布する。全長14~28センチメートル。尾羽は長めで、色彩は多くの種が黄緑色系ないし灰褐色系、雌雄同色のじみなものが多い。このうち日本に生息するのはヒヨドリとシロガシラの2種である。シロガシラ属35種中の1種シロガシラPycnonotus sinensis琉球(りゅうきゅう)諸島の石垣島、西表(いりおもて)島、中国中部以南にも留鳥として生息している。

 種のヒヨドリHypsipetes amaaurotisはヒヨドリ属20種中の1種で、同科で最北限に分布する日本列島特産種である。南千島、北海道、本州、四国、九州、琉球諸島や台湾の蘭嶼(らんしょ)、その南の海上に浮かぶバタン、フガ、バブヤンなどの小さな島嶼に分布する。北方の寒冷地に繁殖するものは秋・冬季に南部の暖地に数百羽ごとの群れをなして移動するが、琉球諸島以南や小笠原(おがさわら)諸島などの島嶼に生息するものはほとんど移動することがなく、したがってごく限られた地域にすむ島嶼型となり、若干色彩や大きさに変化を生じている。そのためヒヨドリはさらに12の亜種に分類され、アマミヒヨドリ、リュウキュウヒヨドリ、イシガキヒヨドリ、オガサワラヒヨドリなどとよばれているが、渡りをするのはエゾヒヨドリとヒヨドリとである。

 全長約27.5センチメートル。主色は暗青灰色で尾が長く、全体として細長い鳥である。頭頂、後頸(こうけい)は青灰白色で羽毛の先端はとがる。上面は暗青灰色、下面は灰褐色と白色とのまだら。耳羽からのどにかけて栗(くり)褐色斑(はん)がある。広い翼を羽ばたいては体につける動作を繰り返し大きな波状を描いて飛ぶ。常緑広葉樹林にすみ、ピーヨ、ピーヨとにぎやかに鳴き、虫、木の実、花の蜜(みつ)などを好んで食べる。樹木や庭木が多ければ公園や市街地にも現れ、人工の餌(えさ)台にもよく集まる。

[坂根 干]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒヨドリ」の意味・わかりやすい解説

ヒヨドリ
Hypsipetes amaurotis; brown-eared bulbul

スズメ目ヒヨドリ科。全長 27~29cm。全身が灰褐色だが,頭部は灰色に近く,耳羽が栗色。腹面は色が淡く,白い斑が密にある。尾は長く,とともに灰褐色。色彩にやや違いのある 12亜種に分類され,日本には 8亜種が生息する。生息環境は常緑広葉樹林から落葉樹林疎林,農耕地,都市の緑地まで多様である。漿果(→液果)や果実,花弁,花粉,花蜜などのほか昆虫類も食べる。かん高い声で「ひーよひーよ」とよく鳴く。朝鮮半島,日本,タイワン(台湾)フィリピンバタン諸島などに生息する。多くは留鳥だが,本州中部以北で繁殖する鳥は冬季温暖な地方に移動し,中国東部では冬鳥(→渡り鳥)である。秋の渡りの時期には日本各地で大きな群れの移動が観察される。なお,ヒヨドリ科 Pycnonotidaeには 27属約 150種が知られており,おもにアフリカとアジアの温帯から熱帯に分布している。

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