絶対値が等しい正電荷と負電荷とが非常に近い距離に存在して一対をなしているもの。電気二重極子あるいは(電気)ダイポールともいう。
点電荷+q(空間的広がりが無限小で大きさがq)が点電荷-qの位置から測ってベクトルlの位置にあるとする。lが非常に小さいとき、この正負の点電荷は電気双極子をつくり、p=qlはこの電気双極子のモーメントとよばれる。lが非常に小さいとは、この正・負の電荷と周囲の他の電荷との距離に比して、lが非常に小さいという意味である。
電気双極子は本来は電磁気学における一つの概念であるが、物質は微視的には正・負の電荷をもつ微視的粒子が集まってできているので、とくに外から電界がかかっているときには、いろいろな微視的電気双極子が存在する。電磁気学によると、電気分極は電気双極子モーメントの単位体積当りの総和である。したがって、物質の誘電性は、微視的には、その中に存在する微視的電気双極子の行動として説明される。
[沢田正三]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…正負の電荷を結ぶばねは物質の弾性に対応し,ばねの強さが交互に変わっているためこの模型はどこにも対称中心がない。正電荷と負電荷の間隔をl,電荷をqとすると,この両者の積qlは電気双極子と呼ばれる物理量となり,負電荷から正電荷に向かうベクトルで表される。また,表面に現れる電荷量はこの電気双極子の総和に正比例している。…
…(1)電気双極子 大きさが等しく符号が反対の二つの電荷が並ぶ配置を電気双極子という(図1のa)。単に双極子といった場合には電気双極子を指すことが多い。…
…これは分子内の電子の分布に偏りがあるためである。分子内の正負の電荷分布にずれがあることを,分子が電気双極子になっているという。ふつうの状態では,この電気双極子は物質中でばらばらの向きを向くため,多数の電気双極子の電荷が互いに打ち消し合い,マクロに見れば電荷は現れない。…
※「電気双極子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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