日本大百科全書(ニッポニカ) 「電池時計」の意味・わかりやすい解説
電池時計
でんちどけい
電池を内蔵し、そのエネルギーによって駆動される時計。電池時計は19世紀すでに存在していたが、実用品として製造され始めたのは1950年以降のことである。機械時計に比べぜんまい巻きの手間が省け、また原動力をほぼ一定に保つことができるので、精度を保つには有利である。日本は電池式への転換では世界のトップレベルにあるが、1955年(昭和30)ごろから発売された初期の振り子時計は、電流接断用の機械接点に故障が多く不評を買った。1953年フランスのアト社はトランジスタを用いた時計を発明した。トランジスタは接点と同じ働きをするため、これを用いたトランジスタ時計は故障も少なく無接点式とよばれ、急速に普及した。腕時計については1952年フランスのリップ社とアメリカのエルジン社が協同し電池式時計の発表をしたが、最初に市販したのは1957年アメリカのハミルトン社である。トランジスタ式については1960年ブロバ社が音叉(おんさ)式、1966年日本のシチズン社がてんぷ式を市販している。その後1969年服部(はっとり)時計店(のちセイコー)から水晶(クォーツ)腕時計が発売され、時計は水晶時代を迎えることになった。
[元持邦之]