電解採取(読み)でんかいさいしゅ(英語表記)electrolytic winning

改訂新版 世界大百科事典 「電解採取」の意味・わかりやすい解説

電解採取 (でんかいさいしゅ)
electrolytic winning

重金属鉱石から重金属を塩水溶液の形で抽出し,不溶性陽極を用いて電気分解して,陰極に金属を得る製錬法。亜鉛Znの電解採取は最も広く行われている。まずセン亜鉛鉱ZnSを焙焼して酸化物としたのち,硫酸に溶解して硫酸亜鉛ZnSO4の溶液をつくり,鉛板を陽極,アルミニウム板を陰極として電気分解を行う。そのほかカドミウムCd,マンガンMn,クロムCr,ニッケルNi,コバルトCo等を得るのにも用いられる。
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化学辞典 第2版 「電解採取」の解説

電解採取
デンカイサイシュ
electrolytic winning

原料鉱石から目的金属を溶媒で抽出して得られた金属塩水溶液を,不溶性陽極を用いて電解し,陰極に高品位の金属を得る湿式電気冶金の一種.電解採取の代表的な例は亜鉛で,このほかにカドミウム,銅,コバルト,アンチモン,鉄,マンガンなどがあるが,最近はクロムにもこの方法が行われている.原鉱石は予備処理をほどこして,目的金属が溶媒中に溶解しやすい形の化合物にかえておく.溶媒としては,安価で取り扱いやすい硫酸がおもに用いられる.この方法の利点は,低品位鉱石(貧鉱)や粉鉱などを原料に用いて,純度の高い金属が得られること,溶媒は循環して再使用できることなどである.また,燃料を必要としないが,電力消費に大きい難点がある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の電解採取の言及

【製錬】より

…(8)電解製錬 溶融塩もしくは水溶液という電解質溶液を利用して,イオンとして溶解している金属を電気化学的に還元する方法。金属塩の形で精製した原料を電解質溶液に溶解して金属に還元する電解採取と,一方の電極で粗金属を溶解させ,一方の電極で純金属を製造する電解精製とがある。電解精製では電解質溶液は単なる反応媒体で,不純物の分離の働きをする。…

【電気化学工業】より

水電解による水素H2の製造,食塩電解による水酸化ナトリウムNaOHと塩素Cl2の製造,陽極の酸化力を利用した電解酸化による塩素酸塩,過塩素酸塩の製造,陰極の還元力を利用した電解還元によるアクリロニトリルからのアジポニトリルの製造などがある。 金属の製錬では,重金属鉱石を焙焼後抽出して重金属塩の水溶液をつくり,これを精製した後,電気分解を行って陰極上に金属を析出させる電解採取が,亜鉛Zn,カドミウムCd,クロムCr,マンガンMnなどの金属の採取に用いられている。また電気めっき(電鍍)は金属表面の防食,装飾,堅牢性付与の目的で広く行われている。…

※「電解採取」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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