改訂新版 世界大百科事典 「電鋳耐火物」の意味・わかりやすい解説
電鋳耐火物 (でんちゅうたいかぶつ)
electrofused refractory
電気炉で耐火物原料を溶融し,これを金属と同じように鋳型に注入して鋳込んだ耐火物。電鋳耐火物は1926年アメリカで開発され,アルミナ・シリカ質耐火物としてガラス窯に用いられて,革命的な耐用性を得たことに始まる。一般の耐火物が粒子結合して気孔が多いのに対して,電鋳耐火物は気孔のほとんどない一体組織をしているために,溶融物との接触反応が著しく少なくなり,耐用性が大幅に延長する特徴をもっている。また電気溶融により新しい合成鉱物が得られることも特徴であり,アルミナ・シリカ質の合成ムライト3Al2O3・2SiO2などがその例である。
電鋳耐火物には次の4種がある。(1)アルミナ・シリカ系のムライト質として加熱炉,各種精錬炉などに用いられるもの。(2)アルミナ質としてアルカリをほとんど含まないコランダム(α-アルミナ)質と,アルカリを5~6%含有したβ-アルミナ質,およびこれらの混合品の3種があり,ガラス窯,超高温焼成炉などに使用されている。(3)アルミナ・ジルコニア・シリカ質としてアルミナ45~51%,ジルコニア32~41%,シリカ10~16%を含有するコランダム,バデレアイトZrO2およびガラス質からなる電鋳耐火物は,アルカリに対する耐食性が大きいので,ガラス窯の重要部分に広く使用されている。(4)マグネシア・クロム質としてペリクレースMgOと複合スピネルR″O・R2O3からなる電鋳耐火物があり,製鋼用,各種精錬炉用などに使用されている。
なお電鋳耐火物はスポーリングに弱いので,温度変化にはとくに注意を要する。
執筆者:西川 泰男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報