電気炉(読み)でんきろ(英語表記)electric furnace

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

電気炉
でんきろ
electric furnace

電気エネルギーを熱エネルギーに変換して金属材料を加熱または溶解するジュール熱を利用する電気抵抗炉,電磁誘導電流を利用する低周波誘導炉渦電流を利用する高周波誘導炉弧光の高熱を利用するアーク炉などがある。このうち工業用として生産規模上最も重要なのは製鋼用のアーク炉 (エルー炉) である。高周波炉は鉄鋼の表面硬化などの熱処理用のほか,真空溶解,高融点金属精製,ゾーンメルティングなどの新しい技術に応用が拡大しつつある。低周波炉は商用周波数を用い,おもに鋳鉄,銅合金溶解に用いられる。抵抗炉は使用温度が限られるので工業用にはアルミニウム合金溶解,るつぼ保温などであるが,取扱いが簡単で自製も容易なので,実験研究用には最も多く使われる。別にモリブデンのように,焼結棒を直接抵抗体として大電流を流し,融着させてスエージ (打延ばし) 材とするのも一種の抵抗炉といえる。高融点金属塊,板,棒などの製造に利用される。なお溶融塩電解槽は高温保持と製錬を兼ねて電気エネルギーを使うが,電気炉とはいわない。

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百科事典マイペディアの解説

電気炉【でんきろ】

電気エネルギーにより加熱する炉。抵抗炉,アーク炉,誘導炉の3種。抵抗炉は抵抗体のジュール熱を利用したもので焼入れ,焼きなまし,焼結,浸炭,窒化など多方面に使用。誘導炉は誘導加熱を利用したもので,高周波誘導炉,低周波誘導炉などがある。
→関連項目砂鉄銑電気製鋼反射炉溶解炉

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世界大百科事典 第2版の解説

でんきろ【電気炉 electric furnace】

電気を熱源とした炉で,現在金属工業や化学工業の方面に広く利用されている。電源には単相または三相の交流が用いられている。電気炉は燃料炉に比べ,非常な高温に到達させることができる点や操業が容易である点がすぐれている。電気炉は原理的には電気エネルギーを熱に変換して被熱体にそれを伝えるものであり,熱を伝える方式により,抵抗炉,アーク炉,誘導炉の三つに大別できる。
[抵抗炉]
 抵抗体に電流を流して発熱させる方式の電気炉で,直接抵抗炉と間接抵抗炉とがある。

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大辞林 第三版の解説

でんきろ【電気炉】

電流によって発生する抵抗熱・アーク熱・誘導熱を利用して高温を得る炉。安定した高温が長時間得られ、温度調節が容易。金属の溶解などに用いる。電炉。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

電気炉
でんきろ
electric furnace

電気エネルギーを熱源として加熱する炉で、実験室だけでなく、金属、機械、化学工業、窯業をはじめ広く用いられている。広義の電気炉を加熱方式で分類すると、抵抗炉、アーク炉、誘導炉、電子ビーム炉および熱放射を利用した炉などになる。一般に電気炉は、燃料を用いる燃焼炉に比べ、廃ガスの発生がなく炉内雰囲気の制御が容易であるとともに、温度制御などの操作も非常に容易で自動化しやすい。一方、電気エネルギーの熱への変換効率は悪く、高価であり、大規模な工業炉では電力費が問題となる。[井口泰孝]

抵抗炉

電気抵抗体に電気を流すときに発生するジュール熱によりこれ自体を加熱し、その熱で被熱物を加熱する。空気中で1200℃以下で使用される一般的な発熱体にはニッケル‐クロム、鉄‐ニッケル‐クロム、および鉄‐クロム‐アルミニウム合金がある。これ以上の温度では白金、白金‐ロジウム合金、炭化ケイ素、二ケイ化モリブデン、ランタンクロマイトがある。これらは1500~1900℃が限度であるが、さらに高温では小規模であるがジルコニア、トリアなどがある。真空中または非酸化性雰囲気ではモリブデン、タングステン、タンタルなどの高融点金属や黒鉛が使われ、実験室的には2000℃以上の高温炉もある。金属発熱体は加工が容易で、線、棒、板、メッシュ、円筒状など任意の形状のものが得られるが、非金属発熱体は、棒状、円筒状など一定の形状である。
 以上は間接抵抗炉であるが、被熱物に直接電流を流し、そのジュール熱で加熱する直接抵抗炉もあり、カーバイド、人造黒鉛の製造、高融点金属の粉末成形品の焼結などに用いられる。[井口泰孝]

アーク炉

黒鉛電極間または電極と被熱物との間でアークを発生させ、その熱により目的物を加熱する。間接アーク炉、直接アーク炉、アーク抵抗炉などがあり、大容量のものが多く、工業的に非常に広く使われている。また、不活性気体の高温プラズマを用いたプラズマアーク炉も工業的に特殊用途に用いられている。[井口泰孝]

誘導炉

電磁誘導により、コイル内の電導性の被熱物または容器に電流を誘起させ、この渦電流によるジュール熱で加熱する抵抗加熱の一種である。金属、非金属の溶解、熱処理などに用いられる。[井口泰孝]

電子ビーム炉

高電圧で加速した電子を被熱物に衝突させること(電子衝撃electron bombardment)により局部的に高温が得られる。高融点物質の溶融や真空蒸着などに利用されている。タングステンのフィラメントを用い、対極として被熱物あるいはタンタルるつぼなどが用いられる。ただし試料の雰囲気は高真空である。アーク炉と違い制御は容易である。[井口泰孝]

熱放射を利用した炉

太陽炉と同じ原理、すなわち発熱部と試料のある炉の部分とが離れている形式の炉であるので、試料部の雰囲気調整は容易である。熱源として赤外線ランプを用いる赤外線イメージ炉では1400℃の温度が得られるものもある。炭素アークを用いるアークイメージ炉では3000℃以上の超高温が得られる。これらは回転放物面をもつ反射鏡あるいはレンズを利用して集光し、焦点に設置した試料を加熱する。本法は急熱、急冷が非常に簡単に行える。反応容器は透明石英を用いることが多く、加熱中の試料の状況を観察することが可能である。[井口泰孝]

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世界大百科事典内の電気炉の言及

【製鉄・製鋼】より

…すなわち製銑については,高炉の容量がますます大型化して有効内容積5000m3級の高炉が出現し,装入原料の整粒,後述する自溶性焼結鉱,ペレットの利用などの予備処理の強化,高温送風,酸素富化,送風調湿,さらに羽口からの燃料吹込み,高圧操業などが実施され,計測技術と計算機導入などと相まって,高炉の安定操業,生産性が著しく向上した。 製鋼技術では,工業用低廉酸素の利用により,酸素製鋼法が急速に普及し,平炉・電気炉への酸素の利用も著しく,従来の鉱石法では望みえなかった極低炭素までの脱炭が可能となり,燃料,電力原単位の低減,生産性の向上に大きな寄与をした。さらに転炉への酸素の利用は純酸素上吹転炉製鋼法(LD法)に発展し,従来の転炉鋼品質の改善,設備費・作業費の軽減と相まって,平炉法に代り製鋼法の主流となった。…

※「電気炉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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