化学辞典 第2版 「非局在化エネルギー」の解説
非局在化エネルギー
ヒキョクザイカエネルギー
delocalization energy
π電子系において電子がある部分に局在していると考えた状態と,ほかの部分にも動きまわり非局在化していると考えた状態とのエネルギー差をいう.たとえば,E. Hückel(ヒュッケル)の分子軌道法(MO法)によると,ベンゼンの6個のπ電子が孤立(局在)している場合を想定すれば(図(a)),このエネルギー Eloc は6αになる.ここで,αはクーロン積分である.また,6個の電子が非局在化しているときの全π電子エネルギーEは,共鳴積分をβとすれば6α + 8βとなる.このとき,
Eloc - E = -8β
はπ電子が非局在化したことによる安定化エネルギーである.一方,図(b)のように,それぞれ2個のπ電子が1個の二重結合に局在している全π電子エネルギーを Eloc′ とすれば,
Eloc′ - E = -2β
となる.これは図(b)の構造を基準にしたときの非局在化エネルギーである.一般には,後者の場合がとられている.以上は分子軌道法による考え方であるが,この非局在化エネルギーは原子価結合法でいう共鳴エネルギーと本質的には同じものとなる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報